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2017 年度 実績報告書

コミュニティ・スペシフィックを志向するアーティストによる地域創造力の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16H05935
研究機関東北芸術工科大学

研究代表者

市川 寛也  東北芸術工科大学, 芸術学部, 講師 (60744670)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード芸術文化政策 / アートプロジェクト / まちづくり / 協働 / 社会彫刻 / コミュニティアート / 市民参加
研究実績の概要

本研究は、今日の芸術あるいはアーティストに求められる職能として「コミュニティ・スペシフィック」という評価軸を設定し、その社会的な有効性を検証することを目的とするものである。なお、本研究における「コミュニティ・スペシフィック」とは、従来のパブリック・アートに対して用いられていた「サイト・スペシフィック」に対して、積極的に地域社会と関わりながら、地域住民との協働を通して達成される芸術実践を念頭に置いている。この目的に鑑み、①平成29年度は海外における事例調査、②国内におけるアクションリサーチ、③これらの研究成果に基づく国際学会での発表を実施した。
①平成29年は5年に1度開催される「ドクメンタ」(ドイツ・カッセル)と10年毎に開催される「ミュンスター彫刻プロジェクト」(ドイツ・ミュンスター)の実施年にあたるため、両事例を通して地域社会と芸術との関わり方について実地調査を行った。これらの成果については、平成29年11月24日に東北芸術工科大学において報告会を実施し、平成30年度に開催される「山形ビエンナーレ2018」に向けての応用可能性について検証を行った。
②茨城県水戸市を舞台に展開されている「ワシントン現代藝術センター」の取り組みを事例にアクションリサーチを実施した。地域と芸術に関するテーマを中心にアーティストやギャラリストを招いて「ワシントン藝術大学校」と称するプログラムを実施することで、一連の活動を客観的に把握する機会とした。
③上記の研究成果をもとに、平成29年8月に韓国の大邱で開催された国際美術教育学会(InSEA2018)において、日本における「コミュニティ・スペシフィック」な芸術実践について、地域に根差した芸術教育(Community-Based Art Education)の観点から考察する学会発表を行い、各国の研究者との情報共有を図った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画に沿って、①海外の事例調査、②国内におけるアクションリサーチの進展、③国際美術教育学会における研究発表を滞りなく実施することができた。とりわけ、平成28年度に環境整備を行った「ワシントン現代藝術センター」については、平成29年度にフランス・パリで開催された写真専門のアートフェア「パリ・フォト」のプリズム・セクションにおいて展示された。平成30年には、スイスのバーゼルで開催されるリステにおいても展示がなされるため、日本の地域社会における芸術実践に対する国際的な評価を検証する機会となることが期待される。
これらの当初の研究計画に加えて、平成29年度より研究機関が東北芸術工科大学(山形県山形市)に異動したため、東北地域における実践研究の方法についても検討を進めてきた。その中で、岩手県胆沢郡金ケ崎町において、重要伝統的建造物群保存地区内の保存物件を地域住民との協働で管理する機会を得たため、今後はこれまでに蓄積してきた研究方法に基づき、新たなアクションリサーチの場をつくりだすことを想定している。

今後の研究の推進方策

本研究のメインテーマである「コミュニティ・スペシフィック」概念については、美術科教育学会における口頭発表および論文、国際美術教育学会(InSEA)における口頭発表およびプロシーディングを通してある程度の理論構築を達成することができた。今後は、ここで得られた成果を具体的な地域創造へと接続させていくための実践研究を進展させる。
その具体的な現場として、研究最終年度となる平成30年度には以下の二か所でのアクションリサーチに力点を置く。第一に東北芸術工科大学が主催する「山形ビエンナーレ2018」であり、第二に岩手県胆沢郡金ケ崎町におけるプロジェクトである。前者については、アーティストと地域住民との協働の場を創出し、参加型の芸術の実践を試みながらアクションリサーチに取り組む。後者については、重要伝統的建造物群内の保存物件を舞台に、「コミュニティ・スペシフィック」の考え方をベースに据えながら、地域住民との協働のもとに当該物件を「金ケ崎芸術大学校」として整備を進めていく計画である。ここでは、地域住民一人ひとりが持っている創造性を引き出しながら、日常生活の延長線上における芸術と学びの場をつくりだすことを念頭に置いている。
これらの事例をもとに、例えば宮沢賢治が掲げた「農民藝術」やヨーゼフ・ボイスが提唱した「社会彫刻」の理念を援用しつつ、創造的な地域をつくりだす上での芸術あるいはアーティストの関わり方について研究を進めていく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 「コミュニティ・スペシフィック」概念の有効性に関する一考察―美術と場所の関係性を巡って2018

    • 著者名/発表者名
      市川寛也
    • 雑誌名

      美術教育学

      巻: 39 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] How Can Artists Establish a Creative Community?: Community-Specific Art in Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroya Ichikawa
    • 雑誌名

      Proceedings from 2017 InSEA World Congress Daegu

      巻: - ページ: 368‐373

    • 査読あり
  • [学会発表] 日常とつながる鑑賞教育―身近な地域の観察を中心に2018

    • 著者名/発表者名
      市川寛也
    • 学会等名
      第40回美術科教育学会滋賀大会
  • [学会発表] How Can Artists Establish a Creative Community?: Community-Specific Art in Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroya Ichikawa
    • 学会等名
      2017 InSEA World Congress Daegu
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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