研究計画に基づき、実践課題としてインタラクティブ性を伴う実写映像が生成可能な映像装置を開発した。具体的には、閲覧者が何かに憑依したかのような体験を想起させる映像や幽体離脱したかのような体験を想起させる映像装置を開発した。このような装置を実現させるために、体験者が装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)に映像を配信するための環境装着型カメラモジュール装置を開発した。体験者に最も近い位置にある環境装着型カメラモジュール装置が体験者のHMDに映像を配信する。この装置を実現するために、環境装着型カメラモジュール装置は周囲環境に容易に設置可能であり、汎用・拡張性を考慮しホストサーバによる一括管理でなく不特定他者によるアドホック通信が必要である。そこで、環境装着型カメラモジュール装置に固有のアクセスポイント識別子(SSID)を設置し、全環境装着型カメラモジュール装置に共通のIPアドレスを設定した。体験者のHMDに接続された小型のPCが、絶えず周囲のネットワークをスキャンし、最も電波強度の強いSSIDを持つ環境装着型カメラモジュール装置のネットワークにアクセスし、全環境装着型カメラモジュール装置に共通のIPアドレスで環境装着型カメラモジュール装置と接続する。体験者側のPCには、環境装着型カメラモジュール装置から映像がストリーミングされることで、ホストサーバを用いずに環境装着型カメラモジュール装置を追加するのみにより、容易に拡張可能となったことを確認した。 以上の成果を札幌市立大学論文集で発表し、札幌チカホ会場で成果発表展を実施し外部に本研究についてを発信した。また、第三者に本方法論に従って表現創作を実施してもらったところ、視線を混乱させる表現や時間を錯覚させる表現など、新規的な非現実的実写映像が創成されたことから、本方法論が有効である可能性を示唆できたと結論づけた。
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