研究課題
若手研究(A)
本研究では,台湾・アメリカの研究者と連携して国内外で複数の手法を用いた実験を実施し,「動詞-目的語-主語」を基本語順に持つ台湾先住民族言語であるタロコ語母語話者が動詞が内包する「行為情報」に特化した認知的習慣を持ち「行為情報」を中心に世界を認識・記憶することを示した。また動詞後置型言語である日本語との比較を通して,人の認知構造の普遍的側面と個別的側面を包括的に検討した。それらの成果を複数の論文ならびに国際学会や招待講演(日本, アメリカ, トンガ)として発表した。
心理言語学
これまでヒトは普遍的に「行為者-対象物-行為」の順に事象認知を行うと考えられていたが,台湾先住民族語であり危機言語でもあるタロコ語のような動詞先行型言語は,技術的・地理的制限から研究対象とされていなかった。本研究ではパントマイムと思考過程を反映する視線計測器を用い,タロコ語母語話者が動詞先行型という「語順」の習慣的使用により事象の行為情報から先に認知することを明らかにし,これまでの普遍的認知仮説に反する新たな視点を与えた。危機言語に内包される認知プロセスの多様性を認めた本研究の成果が,言語継承の意欲・先住民としての帰属意識を高め,先住民言語の言語保存や言語の活性化に繋がることが期待できる。