研究課題/領域番号 |
16H05940
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木山 幸子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10612509)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文末モダリティ / 対者敬語 / 終助詞 / 事象関連電位 / 加齢変化 / 世代間コミュニケーション |
研究実績の概要 |
超高齢社会となりつつある日本に住む我々は、高齢者に対する適切なコミュニケーション方略を心得なければならない。高齢者に敬意を払いながらも親しい関係を構築し、その後もその関係を維持できることが理想である。すなわち、高齢者との間に適切な対人距離を調節することが求められる。しかし高齢者の認知や感情の過程をまだ実際に経験していない我々は、高齢者にとって本当に心地よい距離のあり方がどのようであるか知ることは難しい。それを推察する手係を提供するために、本若手(A)課題は、日本語において対人的機能を持つと考えられる文末モダリティに焦点を当て、高齢者との対人関係構築過程の神経基盤を明らかにする実験研究を行うものである。 本課題2年目にあたる29年度には、前年度に実施した調査の知見を学会や招待講演の場で発表し、高齢者との円滑なコミュニケーションのあり方を考える機会を提供した。 次に、上述の調査の結果選別した文末モダリティの実験文を用いて、実験参加者に疑似会話に参加してもらい、その疑似対話相手の文末モダリティの使用に応じて参加者の快・不快感がどのように変化するかを検討する事象関連電位の実験を計画した。所属する研究室内に学外から高齢者を招いて脳波測定を実施するための環境を用意し、実験実施補助の学生のトレーニングをし、円滑に実験を実施する準備を整え、実験を開始することができた。これまでに得られたデータの予備的分析では、問題なく文末モダリティ表現に対する反応を分析できる見通しが得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の異動により、本年度は新しい環境での実験体制の整備が求められたが、円滑に体制を整え、高齢者を対象とした測定を開始することができた。地域の複数の団体の協力により高齢の実験参加者を募集し、すでに予定の半数近くのデータを取得できている。 また、本課題の前に助成を受け、本課題の基盤となった挑戦的萌芽課題で得られた知見について、本課題1年目の調査の結果から示唆されたことを統合した論文が、神経言語学の国際学術誌(Journal of Neurolinguistics)誌に掲載された。この他、異世代間コミュニケーションにおける文末モダリティ表現の役割に関してこれまでに得られた知見を複数の学会や招待講演の場で発表し、国内外の研究者の関心を集めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度に当たる本年度には、脳波実験を予定人数が集まるまで続ける。得られたデータについては文末モダリティ表現に基づく事象関連電位の世代間比較分析をし、国内外の学会での発表、国際学術誌への論文掲載を目指す。 この結果得られる知見に基づいて、さらに円滑な異世代間コミュニケーションのために文末モダリティ表現の役割を把握する神経科学研究の妥当な方向を探り、本研究室にその研究拠点を確立させたい。
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