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2017 年度 実績報告書

世界を目指すサッカーコーチのための英語力向上プログラム

研究課題

研究課題/領域番号 16H05942
研究機関立命館大学

研究代表者

西条 正樹  立命館大学, 言語教育センター, 外国語嘱託講師 (80706614)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードジャンルベースドアプローチ / アスリート留学サポート / ESP / 選択体系機能言語学 / コーチング / サッカー留学
研究実績の概要

海外の高等教育機関等に留学経験のある日本人の数は、2015年度は84,456人にも達した。このような時勢を反映し、海外の高等教育機関への留学志望者のための言語支援プログラムの策定が各方面で進められている。しかし, 海外に渡る日本人の目的は学術的なものだけではない。たとえば、近年スポーツ留学生の数は年間1,500名に上る。そのような中で,一部のスポーツ留学生が十分に活躍できない要因として,語学力不足が指摘されている(辻 2013)。
スポーツ場面など, より実用的な言語使用においては、非文法的であったり,言いよどみがあったりしても,実際に使用された言語データを使用した方がよいとする見方がある(Burns et al. 1996)。本発表では、そうした実際に社会で使用された言語データを教材(オーセンティック教材)として使用するジャンルベースドアプローチ(GBA)を用いた実践指導報告をする。研究対象は、将来、海外でサッカーのコーチやプレーヤーを目ざす社会人や学生6名である。筆者が勤務する大学の授業やSNSを通じて受講希望者を募った。指導方法は, GBAの学習サイクルに基づき,原則的には隔週で屋外実習と屋内学習を交互に入れ,屋外実習でモデルコーチの英語コーチングを体験し,翌週の屋内学習で,屋外実習でモデルコーチが話していた英語を教材として使用し,コーチング英語の特徴(語彙文法資源)をField,Tenor,Modeの観点で明示的に指導した。実施場所は立命館大学びわこ・くさつキャンパスである。学習者は, 活力にあふれた前向きな学習姿勢と, 生きた英語に接したことによる気づきや喜びを示し, 英語の認識とパフォーマンスに向上の兆しを見せた。本発表における議論は, ノンアカデミック分野における有効な言語支援プログラム策定の一助となると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2016年度は、モデルコーチのコーチングテクストを選択体系機能言語学の観点から分析し、オーセンティック教材を作成することを主眼に置いた。2017年度からは、実際にジャンルベースドアプローチを用いた実践教育プロジェクトを開始した。海外で英語を使ってサッカー活動をしたい日本人選手、コーチ10名が集まり、約半年に渡ってデータ収集ができた。分析対象となったのは、6名であったが、彼らのタスクパフォーマンスを2回に分け評価をしてみたところ、2期間のうちに有意差が見られるほどの変化は見られなかったが、Field、Tenor、Modeの3観点に分け、評価をしてみたところ、Tenor>Modeという順に効果量に違いが見られた。Fieldにおいては効果量は検出されなかった。このように選択体系機能言語では、言語を3つのレイヤーを通して分析するが、各々の観点からタスクパフォーマンスを評価してみると、差異が見られたということは、指導方法を各々の状況に合わせて調節する必要性があることが分かる。こうした結果は、ジャンルベースアプローチを用いる際の重要な教育的示唆を与えると考える。
また、本研究プログラムの受講生は、受講後には、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、カンボジア、モンゴルへと各々渡航していった。本講座の内容が彼らに大きく影響を与えた結果である。
また、本研究の英語学習とスポーツを組み合わせるという手法は、民間機関も興味を持ち始めており、2017年末には、2回ほどフットサル場の運営会社である株式会社メゾネットとコラボをして、一般にも公開された。いずれの会も30人近くの参加者が集まり、好評を博した。

今後の研究の推進方策

2017年前期に実施した研究プログラムであるFootball English Session(以下FES)の受講生たちは、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、カンボジア、モンゴルへと各々渡航していった。2018年度は、彼らの現地での活動を調査し、FESでの学習内容が、その後、彼らにどのような影響を及ぼしているか、インタビュー調査を行う。質問項目は、1.「現地での言語活動」と、2.「海外でのサッカーが活動が与える心理的側面」に特化したものとする。具体的には、1.に関しては、(1)海外のサッカー活動で困ったこと、(2)どのようなシーンで特に英語が必要だと思ったか、(3)本研究プログラムを受講していて役に立ったこと、(4)海外を実際に経験した今、本研究プログラムに取り入れるべきだと思った学習項目、(5)今後の英語学習の方向性、の5項目となる。2.に関しては、(1)あらためて、なぜ海外に行こうと思ったのか、(2)今回実際に海外に来てみて、どんな感想を持ったか、(3)海外で大変だったこと、(4)海外の生活からは何か得られたこと、の4項目となる。
いずれの回答データもテキストデータにし、帰納的コーディング分析をして、各々の回答における傾向パターンを浮き彫りにする。また、2.の質問項目に関しては、グラウンド・セオリー・アプローチ(GTA)を用いて、渡航者の心的変化を探索する。
具体的な渡航計画は以下の通りである。アメリカ(7月~8月)、オーストラリア(9月中)、ドイツ(1月中)。
上記、インタビュー調査とともに、各渡航者のチーム活動に帯同し、フィールドワークを行い、インタビュー調査では現れない
言語活動のニーズを把握する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Extracting context-based lexico-grammatical features using interpersonal metafuntional analysis: Toward language instruction for overseas football coaching2018

    • 著者名/発表者名
      西条正樹
    • 雑誌名

      Doshisha Literature

      巻: 61 ページ: 43-69

    • DOI

      0046063X

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ジャンルベースアプローチを活用したスポークンディスコース指導の実践報告 - 日本人サッカーコーチの海外挑戦サポートを目指して -2017

    • 著者名/発表者名
      西条正樹
    • 雑誌名

      JABAET Journal

      巻: 21 ページ: 61-76

    • DOI

      13476033

    • 査読あり
  • [学会発表] プロサッカーコーチングテクストの対人的・テクスト形成的メタ機能分析 - 特定目的の英語(ESP)教育への応用を目指して -2017

    • 著者名/発表者名
      西条正樹
    • 学会等名
      日本機能言語学会第25回秋季大会
  • [学会発表] 大学英語クラスにおける授業研究のアプローチとは: 社会文化理論による研究ケースと考察2017

    • 著者名/発表者名
      長尾明子、西条正樹、上條武
    • 学会等名
      2017年度 大学英語教育学会(JACET)関西支部春季大会

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公開日: 2018-12-17  

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