本研究の目的は、明示的・暗示的な語彙知識の習得において、集中学習・分散学習が果たす役割を調査することである。語彙学習における分散効果を調査したこれまでの研究は、いずれも明示的語彙知識のみを測定したものであり、集中学習・分散学習が暗示的語彙知識の習得にどのような役割を果たすかは明らかになっていない。以上のような理由から、本研究では集中学習・分散学習が明示的・暗示的語彙知識の習得に果たす役割を調査することで、効果的な語彙学習法を提案することを目的としている。 平成30年度は、以下の3点を行った。第1に、日本人大学生・大学院生66名を対象に、集中学習・分散学習が第二言語における明示的・暗示的な語彙知識の習得において果たす役割に関するデータ収集を行った。具体的には、研究参加者は集中学習条件および分散学習条件という2つの条件で、学習対象語の含まれた複数の英文を読んだ。分析の結果、明示的知識を測定するテストにおいては、分散学習条件の方が集中学習条件よりも有意に高い得点に結び付いたことが示唆された。一方で、暗示的語彙知識を測定するテストにおいては、分散学習条件・集中学習条件の間に統計的に有意な差は見られなかった。 第2に、国際学会Asia TEFLでの口頭発表等、研究課題に関連した口頭発表を3本行った。 第3に、研究課題に関連した単著書籍を1冊、論文を2本、書籍のチャプターを2本執筆した。内1本は査読付き国際誌Studies in Second Language Acquisition (Cambridge University Press)に掲載された。なお、同誌のImpact Factorは2.7であり、この数字はJournal Citation Reportsに登録されている言語学分野の国際ジャーナル181誌中8位である。
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