研究課題/領域番号 |
16H05944
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア考古学 / 科学技術史 / モンゴル / 匈奴 |
研究実績の概要 |
モンゴル側と作成した調査計画に則って、7月にモンゴル国ドルノド県バヤン・ドゥン郡オルズ川流域の踏査を行なった。踏査したズーン・ウリーン・アダク遺跡では製鉄工程に生成するスラグや羽口が一定の範囲に多く散布していることが確認された。現地で採取した木炭を日本に持ち帰り、年代測定を行った結果、2σで177-51 cal BC (95.4%)の年代が得られた。これによりモンゴル東北部のロシア国境近くに匈奴の製鉄遺跡が存在していたことが明らかとなった。近隣には匈奴の遺跡はまだ確認されておらず、周縁地域における匈奴のあり方、あるいは匈奴の領域を考える上で重要な成果であるといえる。 また9月にはこれまでキーサイトとして調査を継続してきたトゥヴ県ムングンモリト郡ホスティン・ボラグ遺跡の発掘調査を実施し、新たに一基の製鉄炉(10号製鉄炉)と一基の用途不明の炉跡、そして一基の廃棄土坑を検出した。この製鉄炉はタイプ3と呼んでいる、製鉄炉下部のスラグピットと炉外の土坑をトンネルでつなぐタイプの製鉄炉で、これまでの調査成果から紀元前2世紀~1世紀の製鉄炉であると考えられる。用途不明の炉跡は被熱痕跡が強いことから、炉内から取り出した鉄塊を破砕した場所であった可能性が考えられる。 これらの研究成果は、国際学術会議BUMA9(the Beginnings of the Use of Metals and Alloys) や韓国国立中央博物館で開催された国際学術シンポジウム「北東アジアにおける製鉄技術の流れ」などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モンゴル側と共同研究体制を良好に維持しながら、計画通りに踏査や発掘を実施することができた。キーサイトであるホスティン・ボラグ遺跡ではこれまでの見解を補強する成果が得られた。一方で、踏査では新たに匈奴の製鉄遺跡を発見することができた。
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今後の研究の推進方策 |
継続してモンゴル国で調査を行なう。6月末から7月上旬に新たに見つかったズーン・ウリーン・アダク遺跡の試掘調査を実施し、9月にはキーサイトであるホスティン・ボラグ遺跡で竪穴状のプランが見つかっているエリアを発掘調査し、鉄器生産の痕跡を探す予定である。これによって、原料から製品に至る生産プロセスを明らかにすることが可能となる。
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