現代において、パロディ目的の著作物の利用を著作権法上許容するかは、文化的・経済的戦略として、従来の議論の枠を越えた新しい問題として認識されつつある。本研究は、裁判例や学説等のほか、表出しにくい我が国でのパロディ創作の現状を把握しつつ、更に欧米諸国の議論をも参照した上で、パロディ許容の現代的な趣旨を明らかにし、我が国での議論の基礎を提供することを目的とするものである。 今年度は、前年度に把握した我が国におけるパロディの取扱いをめぐる実務的・学問的な議論にもとづいて、専門家等への調査を行った。 また、外国法との比較研究も本調査研究の一つの目的であるが、今年度は主に米国法との調査及び日本法との比較研究を行った。米国法においては、以前からfair use(公正利用)の適用によって、パロディ目的での著作物の利用が適法とされてきたが、その際はparodyのコメント・批評としての要素が注目されていたように思われる。しかし近時は、そのようなparodyに限定されないような利用方法も、fair useによる防御が認められつつあるように見受けられた(例えば、いわゆるマッシュアップが問題となった、2017年のComicMix事件を参照。fair useは4つの考慮要素から判断されるものであるが、第一要素〔利用目的・性格〕について利用者側に有利な判断を行っている。ただし結論としては反対。)。 以上の点について、この点を特に対象とした直接の研究成果の公表には至らなかったが、今後公表を検討したい。
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