研究課題/領域番号 |
16H05950
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
麻田 雅文 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (30626205)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蒋介石 / 日中戦争 / スターリン / ソ連 |
研究実績の概要 |
本研究は、蒋介石が1937年から1945年までにスターリンと交わした書簡を中心に、蒋介石の戦時下外交を解明するものである。また、ソ連と東アジアの国際関係史分析の一環でもある。これらに加え、蒋介石とルーズヴェルト、チャーチルが交わした書簡も収集の対象とし、多角的に戦時下の中国外交を検証する。戦時下の中国は戦力としては連合国のなかで最弱であったが、巧みな外交戦術によって連合国の一角を占めるようになったプロセスも明らかになるだろう。 本年度は、台湾とロシアの史料から、蒋介石とスターリンの書簡を新たに10数通集めることができた。これにて、両名の往復書簡はほぼそろえることができたと考えている。さらに、本年はヒトラーと蒋介石、ルーズヴェルトと蒋介石の書簡も収集することができた。またロシアで刊行されたスターリン、ルーズヴェルト、チャーチルの往復書簡集も入手し、連合国首脳間の手紙のやり取りの全貌が明らかになりつつある。ただし、チャーチルの書簡については、大戦後半部の書簡の入手が進んでいない。蒋介石とチャーチルもまた頻繁に書簡のやり取りをしていたことを考えると、今後の課題としなければならない。 スターリンと蒋介石の往復書簡の内容は、主に四つに分類される。①ソ連の対日参戦、②ソ連の武器供与、③国際情勢の分析、④革命記念日や誕生日の祝辞。1942年以降は④が多くなるが、それは蒋介石にとって、アメリカがソ連よりも重要になったためと推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「スターリンデジタルアーカイブ」、「プラウダ」、「イズヴェスチア」などの電子アーカイブを購入したことで、研究が飛躍的に進展した。また、2017年1月からは、台北の国史館が蒋介石の関係史料をネットで公開し始めたことも、本研究に大きく寄与することになった。これらにより、当該年度の蒋介石とスターリンの往復書簡については、そのほとんどを集めることができたと考えている。 2016年12月23日に「蒋介石とスターリンの往復書簡の分析、1937ー1941年」と題して、「国際学術シンポジウム 和解への道―日中戦争の再検討―」で報告を行った。本報告は本科研の中間報告にあたる。これらをもとに、2017年度に研究をさらに進め、2018年度には成果を公表できるように努める。書簡がそろいつつある現状では、その書簡がなぜ、どのような状況で出されたのかを解明することが課題である。 研究成果としては、「ノモンハン事件 日ソ戦の国際的意義」『毎日新聞』(2017年4月27日夕刊)で、収集した蒋介石とスターリン往復書簡を一部紹介した。また、『ソ連と東アジアの国際政治 1919-1941』(みすず書房、2017年)は、本研究にかかわるテーマも収録した論集である。研究動向である「2016年の歴史学界―回顧と展望―ヨーロッパ(現代―ロシア・東欧・北欧)」(『史学雑誌』第125編第5号、2016年5月)がある。
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今後の研究の推進方策 |
2017年9月に台湾で、蒋介石とスターリンの往復書簡の、1941年から45年までについて発表する予定である。また、2017年6月に、第33回学習院大学史学会大会でも、蒋介石とスターリン、ローズヴェルトなどとの書簡の分析を中心とした報告を行う。 なお、台湾の史料はおおむねインターネットで公開されているが、問題はロシア側はであろう。埋もれた書簡を探すためのモスクワでの現地調査は、現在準備中である。
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