本科研で実施した調査データをもとに、外国籍者の社会統合の規定構造について分析を行い、その結果をまとめた。分析の結果として、以下のようなことが明らかになった。 第一に、移民の階層的地位は人的資本の多寡のみからでは説明されず、一方では欧米諸国出身の移民や留学生としての移住した移民を中心に、高い人的資本を生かして職業的地位の高い職に就き、高い収入を得ている人がいる一方、ブラジル・ペルー籍者やフィリピン籍者などは人的資本の多寡にかかわらず低技能職や不安定雇用に就きやすく、所得も低くなる傾向にあった。 第二に、移民の社会参加の程度は日本国籍者よりも低く、特に自治会・町内会といった地縁組織への参加率が低い傾向が見られた。また、滞日年数と社会参加にも明確な関連はみられず、日本での滞在の長期化が必ずしも社会参加の促進につながっていないことも確認された。これに対し、日本人との婚姻は日本人とのネットワークの増加や日本社会での承認感につながっていた。他方で、移民との結婚ではこうした効果はみられず、日本で家族を持つことそのものが日本人との社会関係の広がりにつながるとはいえないことも明らかになった。 第三に、移民の日本への帰属感情や永住意図などの主観的な統合に対して、社会経済的地位は効果をもたず、日本語能力や日本人との関係性が重要な要因となっていた。一方、メンタルヘルスの状態に対しては、経済的脆弱性と日本人との関係性の両方が影響していた。社会経済的統合や社会関係の形成は、日本における移民のウェルビーイングに深くかかわっているといえる。 これらの成果を日本社会学会での学会報告、報告書および書籍を通じて公表した(書籍は近刊)。
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