研究実績の概要 |
本年度は複数の研究発表を行った。第一に、fMRIを用いた脳構造の個人差に関する研究を出版した(Kanayama et al., 2017)。この研究では、Gallagher (2000)によって提唱されているミニマルセルフ(自己主体感、身体所有感)およびナラティブセルフ(物語的自己)という自己の側面に関して、脳部位の容積を測定しその関連性を調べた。近年の認知神経科学領域においても心理学領域においても問題視されている結果の汎化性を考慮し、別々の場所で測定した脳構造画像を約50名ずつ合わせて一つのデータセットとした。この中で様々な脳部位に関連性が示されたが、十分に統計的基準をクリアしたのは身体所有感のスコアと相関した島皮質のみであった。さらに汎化可能性の検証として、比較対象にHuman Connectome Projectのオープンデータを用い、ダミーデータにおける脳容積と質問紙得点の関連性を検討する試みも行った。またラバーハンド錯覚にかかわる脳波成分と神経栄養因子の関連性を示した論文(Hiramoto et al., 2017)、他者の身体運動への注目が自他弁別能に与える影響を調べた論文(Kashihara et al., 2017)などが出版され、これまでの基礎的な身体認知にかかわる研究成果を発信してきた。また本年度は、モーションキャプチャ、乾式簡易脳波測定装置、湿式脳波測定装置を購入し実験のセッティングを行った。モーションキャプチャにより手指の運動を計測すること、乾式および湿式の脳波計を用いた脳波測定の予備実験を行い、最終年度に行う運動中の脳波測定に関する実験環境を整えた。
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