研究課題
本研究は、国際学力調査の流通過程の変化が与える教育政策へのインパクトを国際比較の視点から分析することを目的としている。教育産業が国際アセスメントの成績や分析に関するデータを自由に利用できるようになったことで、教育政策に経済的な価値が生まれ、グローバルな教育政策市場が形成されている。この場には各国の大学や研究所も参加し、国家による教育の「輸出」が始まっている。教育の「売り手」としての国家の参入は倫理的な問題をはらむだけでなく、比較教育学が蓄積してきた方法論および発展過程を問い直す事象でもある。本研究は4年間を通じて、国際アセスメントを媒介とする、国境を越えた教育政策の売買の実態を明らかにし、新たな研究領域の確立を目指している。当初4年計画としていたが、今年度に育児休業期間が入ったために1年間延長した。4年目にあたる本年度は、研究実施計画に従い、これまでの調査結果を分析し、研究成果の公表を行った。世界比較教育学会(WCCES2019, メキシコ)では、EDU-Portニッポンのベトナムでの展開に関する調査報告を行い、世界教育学会(WERA2019, 日本)では、国際シンポジウムを3本企画し、世界の学校教育における公私の境界の揺らぎに関する論考を発表した。また、日本教育行政学会では、「『教育の輸出』政策の実態と課題―『教育の輸出』をめぐる教育行政学的課題」と題するランチョンWSを開いた。加えて、林寛平(2019)「比較教育学における「政策移転」を再考するーPartnership Schools for Liberiaを事例にー」(日本教育学会編『教育学研究86(2)』pp.213-224)を起稿した。当初計画の4年目後半以降の内容については、2020年度に繰り越して実施する。
3: やや遅れている
①日本教育行政学会のランチョンWSでは、ガーナ・オメガスクールの社員を招聘して情報収集を議論を行う予定だったが、ビザ申請が許可されず、来日を断念せざるを得なかった。加えて、このインフォーマントがオメガスクールを解雇されたため、情報収集が計画通り進んでいない。②育児休業により、4年計画の4年目後半以降については、来年度以降に繰り越して実施する。
2019年度に予定していたQatar Finland International Schoolへの聞き取り調査については、学校側から取材を拒否されたため、当事者の見解は得られなかった。一方で、現地調査により周辺の多様なアクターに聞き取りができたことから、繰り越し後の最終年度となる2020年度には、これらのインタビューデータを分析し、研究成果に結びつけたい。延長された2020年度については、引き続き研究成果の公表を中心に、本課題の最終成果の取りまとめに取り組む。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
信州大学教育学部研究論集
巻: 14 ページ: 306-321
教育学研究
巻: 86(2) ページ: 213-224
10.11555/kyoiku.86.2_213
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