研究課題/領域番号 |
16H05961
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
七分 勇勝 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10446255)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クラスター / 幾何構造 / 電子構造 / 形状転換 / 光応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機配位子で保護された金サブナノクラスターの有機配位子部位に着目し、配位子環境の制御から誘起される金骨格の幾何・電子構造の変化を調査した。まず、前年度に引き続き錯形成サイトを持つ様々な有機配位子の合成を行い、有機配位金サブナノクラスターへの導入を試みた。様々な金属イオン添加を行った結果、ユニークな構造を持つ金クラスター集積体を得ることに成功した。また、アルキル鎖で架橋されたジホスフィンが配位した金6量体クラスターが知られてきた中で、新たに芳香環で架橋されたジホスフィンが配位した金6量体クラスターを合成し、その構造や光学特性を調べた。核磁気共鳴測定では金骨格に近接する架橋ベンゼン環のプロトンが極めて低磁場に観測され、紫外可視吸収スペクトル測定ではアルキル鎖架橋型に比べて極大吸収波長に大きなレッドシフトが見られた。さらに単結晶X線構造解析により架橋ベンゼン環の水素原子が金骨格に近接していることが判明したことから、配位子の架橋フェニレンと金骨格との間にAu-H水素結合型相互作用が働くことを見い出した。こうした相互作用はフェニレン架橋型クラスターの高い化学的安定性に寄与していると考えられる。配位子修飾により金骨格近傍に導入したπ共役系分子が金骨格と電子的な相互作用を示したことから、配位子内の有機リンカーの性質が有機配位金サブナノクラスターの幾何・電子構造に大きな影響を与えることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究結果を通じて本研究のコンセプトである『コアの形状転換による光応答』の理解が深まりつつある。リンカー部位をはじめとする配位子修飾から金クラスターの配位子環境へのアプローチを行うことで本研究のさらなる展開が期待され、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた知見である『配位子環境が及ぼす金コアの幾何・電子構造への影響』をもとに、さらなる配位子修飾と金クラスター合成を行う。そして、合成物に対して光吸収・発光スペクトル測定などを行いそれらの光化学特性を明らかにする。さらに、理論計算による電子構造解析を行ってクラスター構造と特性の相関を明らかにするとともに、配位子・クラスター合成の最適化から金クラスターライブラリーの充実を図る。
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