研究課題
本研究では、有機配位子で保護された金サブナノクラスターの有機配位子部位に着目し、配位子環境の制御から誘起される金骨格の幾何・電子構造の変化を調査した。まず、リンカー部位のアルキル鎖長が異なる2種類の有機配位子の各々を用いて金6量体サブナノクラスターを合成し、それらの評価を行った。両者の幾何構造の比較から、アルキル鎖長の伸長に伴い金コアにねじれが生じることがわかった。一方、光学特性においては、両者で吸収スペクトルの形状は酷似しているものの、発光スペクトルには明確な違いが見られた。そこで基底・励起状態における理論計算を実施した結果、励起状態における金コア構造に発光現象の相違に対応した違いが見られたことから、配位子環境の柔軟性が金サブナノクラスターの励起状態での構造に大きな影響を与えていると結論付けた。また、様々な補助配位子を位置選択的に導入することが可能であることが分かっている金8量体クラスターにおいて、従来用いられてきたモノインに加えてジインの導入を行い、アルキニル配位子におけるπ共役系拡張が金クラスターに及ぼす影響を調べた。その結果、ジイン修飾金クラスターにおいては、単結晶X線構造解析から判明した配位子末端炭素と金原子における距離の短さからAu-π相互作用が示唆され、実験・理論による結果もそれを支持した。これらのことから、ジイン修飾金8量体サブナノクラスターにおいて特異な非結合性相互作用が存在することを見い出した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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