R1年度は、低エネルギー励起域の電子エネルギー損失分光(EELS)計測を可能にするため、超高エネルギー分解能のためのシステムセットアップと光学調整を実施した。新規モノクロメータシステムと低加速電圧用に最適化したシンチレータ式検出器を用いることで、EELSの超高エネルギー分解能を達成できた。具体的には、入射電子の加速電圧が30kVのとき12meV、80kVのとき14meVを実現できた。しかし一方で、装置安定性(エネルギーの時間的な微変動)において改善すべき点があることもわかった。この問題は、長時間露光が必要となる散乱角度域において顕在化し、超高エネルギー分解能を維持して分散関係を計測することが難しい要因となった。低エネルギー励起域(1eV以下)の計測として、超高エネルギー分解能で、セレン化ビスマスのバルクバンド分散とディラック電子が関与するプラズモンが検出可能か否か検証した。しかしながら、約200-250meVの直接遷移型バンドギャップでさえ、明確な信号強度を捉えることが困難であることがわかった。
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