本研究は,生育環境に対する植物の根の成長メカニズムを定量的,かつ高効率で解析可能な新規技術の確立を目的とする.根は,植物にとって水や養分を獲得するための重要な器官であり,その伸長過程で発揮される環境への応答性は,植物個体が成長する上で重要な能力である.本研究では,物理的,化学的環境を定量的に形成可能なマイクロデバイスを開発し,環境要因に対する根の伸長挙動の解析により,根の成長メカニズムの詳細な理解を通じ,将来的には,植物の栽培技術や,品種改良に繋がる知見を得ることを目指す.本年度の実績について,以下にその概要を示す. (1)主根の推進力計測用デバイスによる環境応答性の評価 モデル植物であるシロイヌナズナの主根を対象とし,微細加工技術によって作製した微小力センサを用いて,土壌中を伸長する際に根が発揮する推進力を計測する技術を確立した.本年度においては,根の簡単な物理モデルを構築し,機械的な負荷により根に生じる座屈現象を解析することで,生育を維持した状態で根の縦弾性係数(1~10 MPa)を算出することが可能となった. (2)機械ストレスに対する根の成長挙動の解析 土壌中で根が伸長する際に受ける機械的ストレスが,根の成長に与える影響を定量的に評価するため,シリコーンエラストマーであるPDMSを材料とする微小な円柱構造体をアレイ化したマイクロデバイスを開発し,機械的ストレスが根の成長に与える影響の評価を行た.その結果,機械的ストレスと根の伸長速度の間に負の相関性があることを定量的に明らかにした. 本年度の成果について,国内会議2件,国際会議2件で発表した.
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