研究実績の概要 |
本年度は作製した単純チタン酸化物薄膜の物性評価を進めた。超伝導を示すgamma型Ti3O5薄膜とTi4O7薄膜では、抵抗率の温度依存性からゼロ抵抗を、磁化の温度依存性からマイスナー効果を観測し、バルク超伝導であることを明らかにした。パルスレーザ堆積法を用いた薄膜合成と放射光X線回折を用いた詳細な構造評価、電気磁気測定による超伝導特性を合わせてこれらの結果がScientific Reports誌に掲載された。 TiO, Ti2O3, gamma型Ti3O5共晶薄膜においては、SPring-8を用いた放射光X線回折と透過型電子顕微鏡により薄膜組成と構造評価を行った。X線回折測定による定量解析から、各相の組成比率を算出し、超伝導を示す共晶薄膜においてはgamma型Ti3O5の割合が多いことを明らかにした。電子顕微鏡観測により薄膜の内部構造を直接観測したところ、基板との界面ではTi2O3相のみが形成され、その上部ではTiOとgamma型Ti3O5の共晶という2層構造が形成していることが明らかになった。界面でTi2O3層が形成される理由として、基板に同一結晶構造であるAl2O3を用いているためと考えられる。基板のエピタキシャル力の弱くなる薄膜上部では、アニールによりTiOからgamma型Ti3O5への変化が起こっていると結論づけた。これら共晶超伝導の結果がJ. Appl. Phys誌に論文として掲載された。 Ti4O7薄膜については、イオン液体を用いた電界効果により超伝導相の制御も行っている。現在までに、サイドゲート型のデバイス作製は達成しているものの、電界効果による物性制御は実現していない。引き続き条件を検討して研究を進める予定である。
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