研究課題/領域番号 |
16H05985
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小澤 祐市 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (90509126)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | レーザー顕微鏡 / 超解像 / ベクトルビーム |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度までに構築した3次元ピエゾステージ走査による共焦点レーザー顕微鏡システム上において、ベクトルビームを用いた差引イメージングを行う上での最適なビームモードおよび差引における組み合わせの検討を数値計算に基づき行った。本手法では、通常のレーザー走査型蛍光顕微鏡において実現可能な条件での高空間分解能化を目指しており、検討条件として励起波長488 nm、対物レンズの開口数1.45(油浸)、共焦点ピンホール径0.5 Airy unit(AU)と設定した。本イメージング手法では、フラットトップ(ブライトスポット)状点像分布関数(PSF)により取得した顕微鏡像(ポジ画像)から、ダークスポット状PSFにより取得した顕微鏡像(ネガ画像)の差引のみによって、ダークスポットPSFが有する微小ダークスポット特性に起因した高い空間分解能での顕微鏡像が得られることを原理とする。このような画像の差引演算において、負のサイドローブを抑制しつつ高い空間分解能が得られるような最適なPSFの組み合わせを探索するために、多重リング状の強度分布を有する径偏光および方位偏光の高次横モードのベクトルビームについて、本条件において強く集光した場合のPSFをベクトル回折理論に基づき計算を行い、差引イメージング性能について系統的に検討した。その結果、本イメージング条件において、差引演算におけるサイドローブの発生を数%以内に抑制しつつ、差引後のPSFサイズが半値全幅で110 nm前後となるような組み合わせが存在することが分かった。 また、構築した光学系において蛍光ビーズを観察試料とした蛍光イメージングでの画像取得が問題なく得られることも確認し、計算により得られた集光条件・ビームの組み合わせでのイメージングを遂行するための光学系の調整と検証についても完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画において重要な差引イメージングにおける集光ビーム組み合わせの最適化についての検討は本年度の重要項目の一つであったが、数値計算に基づく系統的な検討から、差引イメージングにおける画像品質の劣化を抑制しつつ、空間分解能の向上が得られる組み合わせを決定できた。また、本手法で用いる高次横モードのベクトルビームの性質上、集光スポットのピーク強度が通常のレーザー光の集光に比べて小さくなることに起因してイメージングにおける信号強度の低下が予想された。本検討では、この点についても考慮した検討を進めることができ、また、実験光学系に関して蛍光イメージングのための調整と検証についても完了したため、概ね当初の計画に従った研究の進捗が得られたと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度では、これまで検討してきた最適な差引イメージングのためのPSF条件に基づいて、実際にレーザー顕微鏡システム上で微小ダークスポットを生成し差引イメージングを実施する。本年度に明らかになったように、高次横モードのベクトルビームを用いたフラットトップ状PSFとダークスポット状PSFとを用いた差引イメージングでは、負のサイドローブ発生に起因したアーティファクトによる画像品質の劣化を抑制しながら、十分な信号強度と空間分解能の向上特性を得るためには一定のトレードオフの関係があるため、この点も踏まえながら実際のイメージング光学系において2次元および3次元での高空間分解能化の実証実験を系統的に進める。観察対象としては、微小な蛍光ビーズに加えて固定生体試料を用いる。
|