研究課題/領域番号 |
16H05988
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 剛仁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70452472)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ誘起ミクロ液相反応 / プラズマ計測 / 粒子合成 / プラズマ材料プロセス |
研究実績の概要 |
近年、プラズマ生成活性種が引き起こす液相内反応である“プラズマ誘起液相反応”は、バイオ応用、材料合成応用、環境応用などでの新展開をもたらし、プラズマ応用における世界的な潮流の一つとなっている。本研究では、プラズマ誘起液相反応の更なる飛躍によりプラズマ応用分野の継続的発展を目的とし、ミクロ液相(数~100 μm 程度の液滴)を反応空間とする“プラズマ誘起ミクロ液相反応”の学術基盤構築に取り組んでいる。制御されたミクロ液相の適用により、「界面現象の増大」や「疑似的に閉じた制御性の良い液相反応空間」の実現が可能である。 初年度には、プラズマ誘起ミクロ液相反応の基礎研究の一つとして、プラズマ―液相界面における和周波分光計測に取り組み、プラズマ生成活性種が水表面に供給された際、表面構造の変化による和周波シグナルの低減が生じることを確認した。また、シグナルの低減がおこる時間スケールと、水面へのラジカル供給がもたらされる時間スケールがほぼ一致すること、更に、活性種供給を止めるとシグナルが回復することを確認した。プラズマ生成活性種供給時、界面において活性種密度が増大しているためと考えられる。 水由来の発光を用いたプラズマ雰囲気のガス温度計測にも取り組んだ。水分子密度が高い環境においても、OHの回転スペクトルの二温度分布解析を行うことでガス温度の測定が可能であることを確認した。 更に、1ミクロ液相から1粒子を合成するプロセスにおいて、閉じた反応空間として機能させることができるプロセス条件領域が存在することを明らかとした。 また、再現性の良いミクロ液相生成手段として、インクジェット技術を用いたミクロ液相の生成と、それを含む雰囲気でのプラズマ生成に取り組んだ。各種測定に向けた時空間再現性を高めていくことが今後の課題ではあるが、初年度において基本となる装置構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では(ア)プラズマ誘起ミクロ液相反応プロセス診断と、(イ)制御性の高いナノ粒子合成および描画プロセス開発、更には(ウ)両者を通じた反応メカニズムの解明に取り組む計画である。該当年度においては、(ア)、(イ)に着手する計画であった。時空間ともに再現性の良い診断システムの構築において、更なる進展が望ましかったものの、プラズマ―水界面診断における進展や、OH発光分光解析における進展もあり、総合的に、ほぼ当初予定通りに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、(ア)プラズマ誘起ミクロ液相反応プロセス診断と、(イ)制御性の高いナノ粒子合成および描画プロセス開発、更には(ウ)両者を通じた反応メカニズムの解明に取り組んでいく。インクジェット技術による高い再現性を伴うミクロ液相生成システムを用いたプラズマ誘起ミクロ液相反応プロセス装置の構築とともに、(A)高時空間分解プラズマ計測を行うとともに、(B)プラズマー液相界面に代表される液相の診断および界面分子構造の計算に取り組む。更に、(C)制御性の高い粒子合成および描画プロセスを導くとともに生成粒子の詳細な解析を行い、上記プロセス診断と合わせプロセスの理解をもたらす。 (ア)プロセス診断:インクジェット技術とプラズマとの相互作用をもたらすプロセス装置と測定系との同期をとることにより、時空間ともに再現性が良く、更にサイズの異なるミクロ液相間での比較を可能とする実験装置の開発を行うとともに、それを用いたデータの蓄積に取り組む。高時空間分解発光分光測定や、レーザー吸収分光計測を用いたデータ取得から取り掛かる。また、プラズマ―液相界面に関する診断として、和周波分光を用いた測定も引き続き進める計画である。 (イ)プロセス開発: 昨年度に引き続き、酸化物系ナノ粒子合成に取り組むとともに、配線材料を見据えた銀や銅粒子のプラズマインクジェットプロセスに取り掛かる。プラズマを用いることによる電気伝導性の向上などを目指す。 (ウ)密度汎関数法(DFT)、分子動力学法(MD)、粒子計算法(PIC)等の計算シミュレーションに取り組むとともに、マテリアルインフォマティクス的な解析の可能性についても検討していく計画である。
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