構造材料は表面からの腐食等により寿命を迎えるが、腐食の進行機構の詳細は不明な点も多い。不動態皮膜の典型的な厚みは数nm程度であり、最表面から数nm程度までの表面領域での腐食過程の理解が極めて重要である。 本課題では、これまで開発してきたKramers-Kronig変換を用いた表面敏感な全反射型XAFS測定手法(KK-XAFS)の高度化を行い、構造材料表面の腐食反応過程のin situ観察からその理解を目指す。 今年度はKK-XAFS法と斜入射X線回折法(GI-XRD) を同軸で測定可能とするシステムの開発を行った。今後の研究の展開を考慮し、これまで主に研究開発の場として来た放射光施設PFのビームラインBL-9Cに加え、BL-15A1での取り組みを始めた。BL-9C等ではX線のビームサイズが1 mm程度であり、スリットでビームを切らないと全反射条件での試料上でのビームの投影長さ(フットプリント)が大きくなり過ぎてしまう。このためスリットを絞り、ビームを切って実験を行っている。これに対してBL-15A1のビームサイズは20 μm程度であり、スリットでビームを大きく切ることなく実験が可能である。また、GI-XRD測定に利用可能な2θアーム等も設置されていることからBL-15A1での研究開発を進めた。 まず、BL-15A1でも吸収端から充分広いエネルギー領域で良質なスペクトルが得られることを確認した。続いて、全反射条件で回折像を得るための実験を行った。非全反射条件での測定も行い、比較検討した。この結果、表面からの回折と考えられるデータが得られた。
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