研究実績の概要 |
構造材料は表面からの腐食等により寿命を迎えるが、腐食の進行機構の詳細は不明な点も多い。不動態皮膜の典型的な厚みは数nm程度であり、最表面から数nm程度までの表面領域での腐食過程の理解が極めて重要である。 本課題では、これまで開発してきたKramers-Kronig変換を用いた表面敏感な全反射型XAFS測定手法(KK-XAFS)の高度化を行い、構造材料表面の腐食反応過程のin situ観察からその理解を目指す。 今年度は、KK-XAFS法と赤外反射吸収分光法(IRRAS)を同時に測定可能とする実験環境の開発を行った。また開発した実験環境で使用可能な in situ 測定チェンバーの設計、製作を行った。この in situ 測定チェンバーの完成により、酸化および腐食ガス雰囲気下の測定が可能な研究環境となった。 上記の開発した実験環境を用いて、KK-XAFSとIRRASを同時に測定可能であることを実証する実験を行った。試料にはNi(30 nm)/Si waferおよび表面を酸化させたNiO/Ni(30 nm)/Si waferを用いた。KK-XAFSはX線を数mradで全反射させる必要がある。その設置条件に、IRRASの赤外レーザーの光路、検出器の位置等を合わせる必要があり、両者は精密に位置合わせされなければならない。試行錯誤も含め、位置合わせを注意深く行い、実証実験の測定を行った。その結果、確かにKK-XAFSとIRRASが同時に測定可能であることが確かめられた。また、KK-XAFS, IRRASそれぞれにおいて、各試料に特徴的なスペクトル構造が得られ、今後の研究展開に有効であることも確かめられた。
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