構造材料は表面からの腐食等により寿命を迎えるが、腐食の進行機構の詳細は不明な点も多い。不動態皮膜の典型的な厚みは数nm程度であり、最表面から数nm程度までの表面領域での腐食過程の理解が極めて重要である。 本課題では、これまで開発してきたKramers-Kronig変換を用いた表面敏感な全反射型XAFS測定手法(KK-XAFS)の高度化を行い、構造材料表面の腐食反応過程のin situ観察からその理解を目指す。 今年度は、昨年度までに開発したKK-XAFS法と赤外反射吸収分光法(IRRAS)を同時に測定可能とする実験環境と専用に開発したin situ測定チェンバーを用いて測定を行った。専用に開発したin situ測定チェンバーは、温度制御に優れており、表面反応の実験に安定して用いることが出来た。また、試料交換の容易さと温度安定性が両立しており、実験の効率性と信頼性に寄与している。 KK-XAFS測定とIRRAS測定を、温度制御およびガス流通下、同時にin situ測定し、表面反応の観察を行った。試料としてはSi wafer上に作製されたNi薄膜を用いた。表面を酸化処理したものも用いて、酸化反応および還元反応の観察に用いた。また、同様のCo薄膜を用いた。複数の温度条件下で、酸化反応および還元反応の観察を行なった。いずれの温度においても、十分な温度安定性を示し、再現性も確認できた。IRRASでは特徴的なピークが観測されており、KK-XAFSの解析と合わせて、反応の理解に繋がると考えられる結果が得られた。
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