本年度は前年度の実績を踏まえ必要となってくるモチビックコホモロジーに付随する6つの関手の枠組みの跡射と無限圏への持ち上げに関する基礎的な研究を行った。前年度に特性サイクルの押し出し公式を証明するためには必要な(スキーム論の意味での)サイクルを構成した。これらのサイクルが実際に欲しい公式を導き出すためにはモチーフの枠組みにこのサイクルを捉えグロタンディークの6つの関手を用いることで導かれるということが観察された。我々のサイクルをモチーフの枠組みに入れるために必要な基本的な道具が跡射である。 エタールコホモロジーに於ける跡射はSGAで構成されており、その類似をたどるというのが基本的な戦略であるが、モチーフの枠組みではエタール降下が出来ず、ニスネビッチ降下しか出来ないという欠点がある。このため様々な基本性質が未だに証明されておらずいくつもの困難がある。一方で局所完全交叉の場合は既にデグリスらにより跡射は構成されており、これを利用する必要がある。これらの技術を駆使し、係数に基礎体の標数の逆数が含まれている場合に跡射を構成することに成功した。これにはガバーによる弱い意味での特異点の解消を用いる。(強い意味での)特異点の解消を仮定すれば基礎体の標数の逆数が含まれていない場合に対しても同様の手法で跡射が構成できる。このことから係数に関する条件なしで跡射は構成されると期待するのが自然である。このことについても考察を行ったが、残念ながら、肯定的な結果を得ることは出来なかった.
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