研究課題/領域番号 |
16H05994
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大川 新之介 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60646909)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 代数多様体 / 導来圏 / 非可換代数幾何学 |
研究実績の概要 |
今年度は、まず、プレプリントarXiv:1412.70602を改定した(投稿中)。これは安定点つき曲線のモジュライスタックの非可換変形に関する研究で、第一版ではDeligne-Mumfordスタック上のHKR同型について理解が足りていなかったため、種数が正の場合の結果に欠陥があった。今回の改定でその点について大幅な加筆を行い、ひとまずこの話題を完成させることができた。 次に、非可換Hirzebruch曲面についてのプレプリントarXiv:1903.06457を発表した。Hirzebruch曲面の非可換変形は次数が高い場合に障害を持つが、一方でVan den Berghの仕事により、射影直線上の階数2の局所自由層両側加群によって非可換変形が全て記述できることがわかっていた。我々はまず、射影直線上の階数2の局所自由層両側加群の明示的な分類を与えた。さらにこれを用いて、対応する非可換Hirzebruch曲面の導来圏に充満強例外対象列を構成し、その応用として一般の非可換2次曲面との導来同値を証明した。また、2次のHirzebruch曲面と重み付き射影平面P(1,1,2)の導来同値の非可換変形を特別な場合に確認した。これはA1特異点のMckay対応の非可換変形とみなせるもので、今後調べるべきことが多く残っている。 また、AS正則I代数によって非可換del Pezzo曲面を統一的に扱うというプロジェクトの枠組みがかなり明快になってきた。特に、全ての次数の非可換del Pezzo曲面を非可換射影平面や非可換2次曲面の場合と同様にAS正則I代数によって定義することができた。 他には、ある種の非可換3次元射影空間に関するVan den Bergh氏らとの共同研究を進めた。非可換射影平面の場合と同様にそれらを分類する幾何学的データが何であるかという問題について、本質的な進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は長く残っていたarXiv:1412.70602を完成させることができ、またarXiv:1903.06457の研究・執筆を通してA1特異点のMckay対応の非可換変形やその先につながる色々な問題を発見することができた。非可換del Pezzo曲面をAS正則代数の観点で扱うという課題についても、詳細がかなり見えてきた。また、非可換3次元射影空間を決定する幾何学データとして何を考えればよいかという問題について解答が得られたのも大きかった。また、導来圏の半直交分解に関する新しい共同研究を持ちかけられ、それについても部分的な結果を得ることができた。以上を総合的に見て、おおむね研究が順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
AS正則I代数に関してはやるべきことが非常に多く残っているので、共同研究者と研究打ち合わせを続けて少しでも解決したい。特に幾何学的螺旋の選び方に関する依存性や、対応する幾何学的データを定めるための適切な安定性条件の決定などが課題である。 非可換3次元射影空間に関する研究もかなり進んできたので引き続き共同研究者と研究打ち合わせを続ける。このような非可換3次元射影空間には非可換3次曲面のペンシルが入っているが、非可換3次曲面のモジュライの中でどの1次元族が同じ非可換射影空間に入るのかという問題が大きく残っているので、これに取り組みたい。また、ペンシルのモノドロミーに関する結果の一部はコンピュータで得られたものなので、概念的な証明を得る努力も続ける。 導来圏の半直交分解に関する研究は、技術的な問題が残っているが、先行結果を十分理解すれば解決可能であると見込んでいる。これも面白い話題だと思うので、来年度中に完成させて発表したい。
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