研究実績の概要 |
1. 連接層の導来圏の半直交分解についてモジュライの観点から基礎的な研究を行った。主結果は、excellentスキームU上の非特異射影スキームXに対して、perf(X)のU上線型な半直交分解を分類するモジュライ問題がU上etaleな代数空間になるというものである。これはプレプリント arXiv:2002.03303 として発表した(Andrea T. Ricolfi, Pieter Belmansとの共著)。それ自体重要な結果であると考えているが、応用としてある種の極小モデルの導来圏が半直交分解を持たないことが証明できる。さらに、半直交分解の定義体に関する応用もある。このモジュライ空間は一般にU上非分離であるため、スキームになるか否かが未解決である。他にも、弱い意味の完備性など、幾つかの興味深い問題が残った。 2. 学生の北村拓也さんと共に、非可換2次曲面の復元問題を完全解決した。非可換2次曲面とは、3次元AS正則cubic Z代数Aに対してその右加群のなす圏Mod Aをねじれ加群のなす部分圏で局所化して得られるアーベル圏Qmod Aと同値な圏のことである。Van den Berghの研究において、これらのZ代数の同型類の集合に、Qmodの同値類を保つような無限2面体群の作用が導入されていた。我々は、逆に、同値なQmodを与える代数同士がこの群作用の同じ軌道に乗っていることを証明した。「直線束」の概念を導入し、それらを圏論的な性質のみによって特徴づけたのが証明の肝である。 3. 石井亮・上原北斗両氏と共に、次数2のHirzebruch曲面の上の例外対象列について以下の構造定理を与えた。(i)任意の例外対象は、シフトを除いて例外ベクトル束に球面ひねりを数回適用して得られる(ii)任意の長さ4の例外対象列同士は変異で移り合う(iii)任意の例外対象列は充満例外列に延長できる。
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