研究実績の概要 |
本研究では星形成の初期条件である分子雲の形成から初めて、星形成過程を可能な限り第一原理的に明らかにすることを目指している。今年度は衝突流中での分子雲形成過程の自己重力を含む高分解能磁気流体シミュレーションを行い、詳細な解析を行った。その結果、衝撃波で圧縮されたガスの密度と磁場強度の間に初期条件に依らない普遍的な関係が成立していること、更にこの関係が他のグループの研究でも同様に成立していることを見出した。衝撃波後面で圧縮されたガスは自己重力で収縮し、個々の星形成過程の初期条件となる高密度の分子雲コアを形成する。多数の分子雲コアについてその重力・熱・磁場・乱流エネルギーの間の関係を解析し、これらの間にも普遍的な関係が成立していることを明らかにした。これらの結果は、星形成過程の初期条件である分子雲コアの性質が環境に依らず普遍的であること、その中で形成される星や原始惑星系円盤の性質にもある程度の普遍性があることを示唆する。実際に星の初期質量分布関数は環境にあまり依存しないことが知られており、本研究はこの普遍性の起源が分子雲コアの形成段階で埋め込まれている可能性を指摘した重要な結果である。この成果を論文としてまとめて投稿し、出版された(Iwasaki & Tomida 2022, ApJ, 934, 174)。 また、本研究で開発したAthena++コードの自己重力ソルバを公開し、計算手法についての論文を投稿・受理された(Tomida & Stone 2023, ApJS, 266, 7)。
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