宇宙磁場、特に銀河に付随する磁場の3次元構造を電波の偏波観測を用いて解明するためのファラデートモグラフィの研究をこれまでに引き続き行った。
まずファラデートモグラフィによって偏波スペクトルから再現できるファラデー分散関数の物理的理解を目指し、単純な銀河モデルを仮定してファラデー分散関数の計算を行った。銀河モデルとしては一様な熱的電子密度と宇宙線電子密度を持つ渦巻銀河を想定し、大局的なリング状の磁場と乱流磁場の両方を考慮して、これらの形状や相対的な強さがファラデー分散関数にどのような影響を及ぼすかを調べた。その結果、ファラデー分散関数は一般に複数のピークを持ち、ピークの高さの比やピークの間のギャップが磁場のパラメータに依存することがわかった。この成果は学術論文として出版され、さらに銀河全体のファラデー分散関数を計算する研究に取り掛かっている。
また、観測された偏波スペクトルからファラデー分散関数を正確に再現するアルゴリズムの研究も行った。特にスパースモデリングやレプリカ交換モンテカルロ法を用いたソフトウェアの開発を行った。そしてオーストラリアの電波望遠鏡ASKAP(Australian Square Kilometre Array Pathfinder)の観測データに適用した。まずは偏波観測の系統誤差を評価し、その後ファラデートモグラフィソフトウェアを適用した。特に2つの電波ローブを持つ銀河や、超新星残骸SN1006の観測データにファラデートモグラフィを適用してファラデー分散関数を求め、その物理的解釈を行っている。
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