研究課題/領域番号 |
16H06003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大田 晋輔 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60548840)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核物質 / 状態方程式 / 中性子星 / アクティブ標的 / 非弾性散乱 / TPC |
研究実績の概要 |
原子核の構造、ダイナミクスから中性子星の構造や超新星爆発、コンパクト連星合体などの天体現象までを支配する核物質状態方程式の決定は原子核物理の大きな課題である。特に近年では中性子星の質量限界の観点から状態方程式の荷電依存性の解明が急務となっている。本研究では、中性子核物質の非圧縮率を実験的に直接決定し、理論モデルが再現すべき確固たる指標を作り上げることを目的としている。特に同重体という新しい切り口を取り入れることにより、質量依存性を排除して、非圧縮率を導出することを目指す。不安定核ネオジム132の巨大単極共鳴のエネルギー測定を実現する。 本年度は製作したアクティブ標的システムをもちいている領域分割型多積層THGEMのプロトタイプの性能評価を論文として公表するためのデータ整理を継続し、また平成29年度にパイロット実験として行ったキセノン136の陽子非弾性散乱の実験データの整理を行っている。当初、理研および放医研で予定していた質量数132同重体のうち放医研において安定核であるキセノン132同重体での巨大共鳴の測定を行った。 THGEMの性能評価ではビーム強度に対する応答が得られ、実験でのビーム強度最適化に関する情報が得られた。キセノン136陽子非弾性散乱では、アクティブ標的システムのうちTPC部分においては十分な性能が得られていたが、シリコン検出器ではバックグラウンド事象が多いことがわかった。そこでバックグラウンド事象を低減するための新たな検出器を設置するとともに、同重体の系統的測定のひとつとしてのキセノン132同重体の重陽子非弾性散乱の測定を行った。この測定においてTPCおよびシリコン検出器ともにバックグラウンドの少ないデータを取得することが可能となった。データ整理については継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では質量数132同重体の巨大単極共鳴のエネルギーの系統性から中性子物質の非圧縮率を導出することを目指し、不安定核同重体でのエネルギー測定を目的としている。その鍵を握るアクティブ標的システムは完成しており、また放医研での安定核に対する測定では、巨大単極共鳴の測定が可能であることを示した。一方で、シリコン検出器での予期せぬバックグラウンド事象を排除するための装置の改善が必要であったため、当初本年度に予定していた不安定核に対する測定の課題申請を見送った。これにより平成31年度のはじめに計画していた不安定核での測定がずれ込むこととなる。そのため、実験遂行に必要な能力については十分であるものの、やや遅れているとの評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で目的とする質量数132同重体の不安定核での巨大単極共鳴測定を遂行すべく、次年度には確実に課題申請を行うとともに、年度内の実験遂行を目指す。同時に、実験遂行に必要な周辺装置の整備、また実験遂行後の迅速なデータ整理のためにもパイロット実験およびキセノン132のデータ整理を進めて解析手法を確立する。また、それぞれの実験データについて論文執筆を行い成果の公表に務める。
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