放射性炭素(14C)などの宇宙線生成核種は大気中で宇宙線によって生成される。通常は太陽系外に起源をもつ銀河宇宙線によって生成されるが、突発的な太陽面爆発(太陽フレア、コロナ質量放出)に伴って放出される高エネルギー粒子(Solar Energetic Particle:SEP)によって生成されることも知られている。これまでに樹木年輪の14C濃度の測定から、西暦775年と994年に超巨大SEPイベントが発生した痕跡が示された(Miyake et al.2012、2013)。大規模な太陽面爆発は人工衛星の故障や通信網の破壊等、現代社会に甚大な被害をもたらすため、過去に発生した超巨大SEPイベントの頻度は将来のイベントに備えるために重要な情報となる。本研究では、年輪中14C濃度の単年分解能(隔年間隔)連続測定を行い、西暦775年イベントと類似した14C濃度変化をとらえることで、超巨大SEPイベントの発生頻度や、そのようなイベントの発生時期と太陽活動度との関係を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、紀元前660年頃に発生した宇宙線増加イベントについて、南極ドームふじ氷床コアの10Be分析から核種増加の痕跡を検出し、超巨大SEPイベント起源を支持する結果を示した(Miyake et al. submitted)。また、紀元前5410年頃に生じた14C増加イベントを新たに発見し、その14C変動と西暦775年イベントなどの14C変動との類似性から、超巨大SEPイベント発生の可能性を示した(Miyake et al. in press)。
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