研究課題/領域番号 |
16H06017
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
赤松 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90549883)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レーザー冷却 / ナノ粒子 / オプトメカニクス |
研究実績の概要 |
本研究を遂行する上で技術的に重要なことは、超高真空中のナノ粒子の光トラップである。昨年度までの研究により、ターボ分子ポンプによる排気の限界だった10^-3Pa程度でのナノ粒子の光トラップに成功した。本年度はまず、ゲッター型イオンポンプを取り付け、さらに排気ができるよう真空装置を改良した。そのうえで、安定な光トラップを達成するよう実験を行った。 まず、常圧から排気をし始める際に、ナノ粒子のトラップロスが多かったため、コンダクタンスの悪い排気系から排気をはじめ、徐々にコンダクタンスをよくするシステムを開発した。これにより、排気直後のトラップロスを少なくすることに成功した。 また、ナノ粒子の重心運動をモニターし、リアルタイムに温度を計測できるシステムを開発した。実験ではナノ粒子の運動から出てくる光信号を電気回路に通し、適当に位相を調整することにより冷却を行っている。本システムを用いて、位相に応じて加熱と冷却が起こること、最適なゲインに関する情報を得ることができた。 一方で、1Paよりも排気を進めると、原因不明の粒子ロスがあり、その問題の解決に取り組まなければならなかった。昨年度中には解決できなかったため、本年度早々に解決する予定である。 ナノ粒子と原子の散乱による理論的考察を進め、ナノ粒子による量子反射の効果について知見を得た。ナノ粒子の散乱断面積は、原子の温度が下がると古典的断面積の100倍まで大きくなることを導いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究では、ナノ粒子の重心運動を制御するシステムを一新し、より効果的にデータが取得できるようになった。一方、1Paよりも排気を進めた際にナノ粒子のトラップロスがあり、さらなる排気ができなくなってしまった。そのため、本年度の後半はその原因解明に費やされ、原子気体のレーザー冷却に関する実験を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1Paよりも低圧な環境においてナノ粒子のトラップロスがあり、この原因解明が急務である。より系統だって実験データを蓄積し、海外の研究者を含め積極的な情報交換を行い、なるべく早いに解決につとめる。その上で、原子のレーザー冷却を行い、ナノ粒子とレーザー冷却された原子気体の同時トラップを目指す。
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