本研究の目的は、超高真空中でナノ粒子を光トラップする技術を確立し、レーザー冷却された原子集団との共存システムを構築することである。最終年度であった2019年度は、これまでの研究成果の集大成としてそのような共存システムを構築することを目指した。 磁気光学トラップのための光学系としてFilter型ECDLの開発を行った。20mW以上のパワーを得られる事に成功し、さらにmodulation Transfer法によりCs原子の共鳴線に安定化することに成功した。昨年度開発したリロック回路を使用せずとも長期的に安定化することができた。さらに、Tapered Amplifierにより600mW以上までパワーを増強し、ファイバー出射後でも280mWのパワーを得ることに成功した。光学システムとしては磁気光学トラップを行えるだけのシステムを構築した。しかし、真空装置の不具合により十分な排気が行えず、磁気光学トラップを行うことができなかった。この原因として四重極磁場を発生させるコイルからのdegasが予想以上に多いことが分かった。 一方、ナノ粒子の光トラップにおいては、よりよいナノ粒子導入法開発のため、これまで使用してきたネブライザーによるナノ粒子の噴霧状況の定量的評価を行った。さらに、ナノ粒子の運動制御においてデジタル回路を導入することで、再現性良く実験が行えるようになった。しかしながら、高真空中への排気中にナノ粒子が小さくなってしまう現象の原因解明、またそれによるトラップロスの解決ができなかった。 当初の研究目的を達成できず残念だが、これまでの研究資材を利用することで近い将来に達成可能となるレベルまで到達することができた。
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