本年度は主に以下の研究成果が得られた. (i)[コロイド分散系の粒子軌道に関する非平衡相転移の機構解明] 我々は,周期剪断下における粒子シミュレーションを用いることにより,粒子軌道に関する様々なタイプの「非平衡相」がジャミング転移点近傍において存在することを見出した.ここで得られた様々な非平衡相は,降伏現象などの非平衡現象とも密接に関係することを明らかにした.特に,ジャミング転移点未満の密度領域においても降伏が観測され,これが粒子軌道に関する非平衡相転移点との一致を確認した.さらに,ソフトニングと呼ばれる非線形レオロジーが,ジャミング転移点未満の密度でも存在することを発見した.本研究成果は既に論文にまとめており,投稿間近である. (ii) [コロイド分散系の不連続シアシックニングの機構解明] コロイド粒子などが溶媒中に分散したサスペンション系における流動曲線(粘性率の剪断率依存性)は,ニュートンの粘性則から大きく外れる非常に複雑な振る舞いをみせる(この様な流体を非ニュートン流体という).その中で,粘性率が剪断率と共に上昇するシアシックニングの理解は発展途上である.そこで我々は,従来研究に比して極めて簡単な動力学模型(粒子間相互作用,粒子間摩擦力,熱揺動力のみを考慮)を提案し,その数値計算でもって実験で見られる多くの流動曲線を半定量的に再現することに成功した.このことから,実際の実験系において,シアシックニングが粒子に働く熱搖動力と粒子間摩擦力との競合によって引き起こされることを明確化した.なお,本研究は,Physical Review E誌から出版されている.
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