地球深部マントルの酸化還元状態を解明するための研究を行った。当初予定されていた通り、開発した新しい技術を用い、高温高圧下における地球深部物質の物理・化学的な性質を、実験的に決定する研究を推進した。地球を構成する元素の内、地球深部マントルの酸化還元状態を支配する最も重要な元素は鉄である。本年度は鉄とその化合物に関して、地球深部圧力における安定相関係や、融点を決定することができた。新しく開発した内部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いて、最も基礎的な純鉄の融点を、これまでになく高い温度圧力である290万気圧5360ケルビンにおいて決定することができた。これは抵抗加熱を用いた安定・均質加熱実験としては世界最高温度圧力記録であり、飛躍的な技術的進歩である。また、様々な元素(炭素、ケイ素、窒素、硫黄、酸素、ニッケル)がわずかに含まれる系において実験を行い、地球核条件下で相関係を明らかにした。どの系においても、これまで行われたことのない高い圧力において実験を行うことができた。本年度得られた結果から、軽元素候補のどれも単独では核中に存在していないであろうことが強く示唆された。長年の謎である地球核内の軽元素と、マントルの酸化還元状態は密接に関係していることが知られており、得られた結果は、マントルと核、両方の進化を理解する上で重要な情報となる。本年度の研究成果としては、国際学術誌に7本(印刷中含む)、国内学術誌に2本の論文が公開された。また、国際学会において7件(共著含む)、国内学会において3件(招待講演含む)の発表を行った。
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