研究課題
金属構造からのテラヘルツ波発生強度が、励起レーザーの波長によらず、強度の4-6乗程度に比例するという結果について考察を行った。波長への無依存性は、多光子イオン化がテラヘルツ波発生機構において主要因ではないことを示しており、理論モデルとの比較を行い論文投稿を予定している。H29年度中に代表者が異動した信州大学においても実験系を構築し、表面増強ラマン分光などに用いられる市販の金ナノ構造から、テラヘルツ波が発生可能であることを見出した。本研究は、金属のレーザー光に対する非線形性を利用しようとするものであるが、物質の光・電磁波に対する非線形応答の増大のためには両者の効率のよい結合が必要である。2次元自己補対構造の一つであるチェッカーボードパターンを金属を用いて構成すると、その構造的要請から広帯域な電磁波吸収が生じる。電磁波吸収は、パターンを形成する金属正方形のごく小さな接続部分で生じる。これを利用し、テラヘルツ波をナノ領域に集中させて吸収させられることを示した。また、金属アンテナを用いてテラヘルツ波を集中させた領域に金属ナノ粒子ペーストを塗布し、数百V/cmを超えるようなピーク電場を持つテラヘルツ波を照射すると、ナノ粒子間で原子移動が誘起され、量子ポイントコンタクトが形成されることを見出した。テラヘルツ波によるナノ構造加工や、抵抗変化メモリの駆動の可能性を含んでいる。金属構造と電磁波の非線形な相互作用に関するこれらの結果の論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまでの主な成果の論文発表を行った。H29年度途中に異動した信州大学においても実験系を構築し、新たな試料からのテラヘルツ波発生も確認した。さらに新たな試料作製を進めている。
励起レーザー強度に対して発生する金属構造からのテラヘルツ波発生強度が、レーザー波長に依存しないという結果について論文発表を行う。広帯域発生とテラヘルツ検出に向けては、さらなるテラヘルツ波の発生効率増大が必要である。光共振とテラヘルツ波共振が共存する構造により、広帯域発生とテラヘルツ検出に向けた光-ナノ構造-テラヘルツ波の相互作用の増大を目指し、シミュレーションによる構造設計と微細加工を行う。種々の対称性の構造の組み合わせによるテラヘルツ波発生効率の変化を調べる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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