研究課題/領域番号 |
16H06027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 達 東京大学, 物性研究所, 助教 (50554705)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 触媒反応 / プラズモン / オペランド / 時間分解 / 放射光 |
研究実績の概要 |
金属微粒子のプラズモン共鳴励起を利用した新規光化学反応がプラズモニック化学反応として最近注目を集めている。しかし、プラズモニック化学反応における固体表面の化学状態と表面反応を反応進行中に直接観測した例はほとんど無い。本研究課題は、高輝度放射光を用いた時間分解雰囲気X線光電子分光法を新たに開発し、プラズモニック化学反応を実時間かつオペランド(反応中)観察し、その反応メカニズムを解明することを目的とする。 研究は以下の二項目に分類し、段階的に進める。 項目①「雰囲気X線光電子分光法によるプラズモニック化学反応のオペランド観測」 項目②「時間分解雰囲気X線光電子分光法の開発及びプラズモニック化学反応の実時間オペランド観測」 研究初年度の平成28年度は、項目①「雰囲気X線光電子分光法によるプラズモニック化学反応のオペランド観測」を目標とした。具体的なプラズモニック化学反応として、金ナノ微粒子担持二酸化チタン(Au/TiO2)表面における水素分子解離反応を研究対象とすることを決めた。金ナノ微粒子及びTiO2基板の準備を行った。TiO2基板への金ナノ微粒子の担持方法は、超高真空中での蒸着及び大気中での市販金ナノ微粒子塗布の2つの方法を準備した。金ナノ微粒子サイズの評価のため、大気中原子間力顕微鏡AFMの導入・整備を行った。プラズモン共鳴励起用の波長可変励起光源(連続光)の導入を行った。また、貴重な放射光ビームタイムに最大限の成果を挙げるため、オフライン実験を可能にするX線管の導入・整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雰囲気X線光電子分光法によりプラズモニック化学反応をオペランド観測するための準備(試料、波長可変連続光励起光源、オフライン実験を可能にするX線管)が順調に進行したため。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年度の平成29年度は初年度に整備した実験装置を用いて、プラズモニック化学反応であるAu/TiO2表面における水素分子解離反応の観測を行う。Au/TiO2試料を作成し、Auナノ微粒子サイズを原子間力顕微鏡AFMを用いて評価する。評価を行ったAu/TiO2試料にH2ガス雰囲気下でプラズモン共鳴波長の励起光(連続光)を照射して、プラズモニック表面化学反応を誘起する。触媒反応が進行していることを質量分析計で生成物を検出することで確認し、その反応最中の触媒表面の化学状態を雰囲気X線光電子分光法(AP-XPS)で観測する。プラズモン共鳴励起により生成される光励起キャリア(電子・正孔)により、Auナノ微粒子の価数変化がAu4f XPSスペクトルにより検出される。次に、Auナノ微粒子からTiO2へのキャリア移動により酸化物表面のポテンシャルが変化するかどうかを確認する。酸化物表面のポテンシャル変化は、光励起した半導体に特有な現象である表面光起電力効果による内殻準位(TiO2の場合、Ti2p)のエネルギー位置の変化として確認することができる。また、課題責任者が既に立ち上げた超高真空下時間分解X線光電子分光装置を用いてAu/TiO2界面においてプラズモン共鳴励起により生成する光励起キャリアの緩和ダイナミクスを調べる予定である。更に、時間分解雰囲気X線光電子分光法の開発のための装置開発を平行して行う予定である。
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