研究実績の概要 |
金属微粒子のプラズモン共鳴励起を利用した新規光化学反応がプラズモニック化学反応として注目を集めている。しかし、プラズモニック化学反応における固体表面の化学状態と表面反応を反応進行中に直接観測した例はほとんど無い。本研究課題は、高輝度放射光を用いた時間分解雰囲気X線光電子分光法を新たに開発し、プラズモニック化学反応を実時間かつオペランド(反応中)観察し、その反応メカニズムを解明することを目的とする。 平成30年度は、時間分解雰囲気X線光電子分光法の開発を中心に研究を推進した。まず、大型放射光施設SPring-8の軟X線ビームラインBL07LSUにおいて軟X線チョッパーを新たに導入した。この軟X線チョッパーを使用して、プローブ軟X線の繰り返し周波数をポンプレーザーと同じ1 kHzに下げることに成功した。この結果、従来の静的な光電子分光測定と同じ実験セットアップで時間分解光電子分光測定が可能になった。次に、時間分解雰囲気X線光電子分光法のテスト測定を行った。実験試料として自然酸化されたp型Si(111)基板(SiO2/p-Si(111))を用い、1 mbar CO2ガス雰囲気・室温の条件でフェムト秒ポンプレーザー(800 nm, 50 mW, 1 kHz)を照射した。表面光起電力によるSi 2p 内殻準位のエネルギーシフトおよびその時間変化を観測にすることに成功した。更に、CO2ガスに由来するO 1s内殻準位のエネルギーシフトから試料表面の仕事関数の時間変化を同時に観測することに成功した。
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