研究課題/領域番号 |
16H06031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣戸 聡 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (30547427)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヘリセン / アザバッキーボウル / ヘキサベンゾコロネン |
研究実績の概要 |
2017年度は、ボウル型分子であるアザバッキーボウルの新規修飾反応の開発、アザヘリセンの類縁体合成と物性解明、ヘキサベンゾコロネン多量体の刺激応答性の発現を行った。アザバッキーボウルは、臭素と作用させることによって位置選択的に置換反応が進行することを見出した。導入した臭素置換基を足がかりとして、遷移金属触媒反応を行ったところ、ビニル基やカルボニル基が収率良く導入できた。導入した置換基によって吸収スペクトルおよび酸化・還元電位が変化することが分かった。このことはアザバッキーボウルの電子構造を制御するのに有効な手法としての発展が期待できる。 アザヘリセンでは、アントラセンではなくよりπ共役が拡張したテトラセンを基質として用いることでπ共役がさらに拡張したアザ[5]ヘリセンの合成に成功した。この生成物はアントラセンよりも酸化電位が低く、空気中で容易に酸化されることを見出した。一方、単結晶X線構造解析によってテトラセン部位が重なり、固体中で一次元鎖構造を形成していることを明らかにした。さらに官能基を選択することにより、固体中での導電性の発現が期待できる有用な結果である。 ヘキサベンゾコロネンでは、ホウ素化を足がかりとした官能基導入、酸化を行うことにより、二量体を収率よく得ることができた。生成物は力学刺激に応答して発光または吸収スペクトルが変化することを見出した。それぞれの変化が、分子間相互作用の変化、もしくは、結合の切断によるラジカルの発生に起因することを明らかにした。これらの結果はRSCの雑誌に掲載され、後者の結果はHot paperに選ばれるなど注目度の高い研究となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、曲面π共役分子の超分子相互作用の発現において、分子間相互作用を用いた力学刺激応答性を示す分子の創成など、一定の成果を挙げることができた。得られた成果は論文として発表しており、雑誌のカバーピクチャーとして選出されるなど、高い評価を得た。また、基盤である基質、アザバッキーボウルとヘテロヘリセンにおいても更なる機能創出に繋がる、官能基導入法や誘導体化に関する新たな知見を得ており、本研究の目的達成だけでなく、さらなる研究に結びつく重要な発見を見出している。 以上の観点より、2017年度の進捗状況においては、計画通り順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、見出したアザバッキーボウルとヘテロヘリセンの新規修飾反応を用いた機能創出を目指す。これまで、かさ高い置換基のみ導入可能であったため、分子間相互作用が阻害されていた。発見した官能基導入法を用いることにより、これらの化合物の物性の緻密な制御が可能になると期待できる。
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