平成30年度はヘテロ元素含有曲面π共役分子、ねじれたポルフィリン多量体およびアザバッキーボウルの機能創出を目的に研究を進めた。アザバッキーボウルでは、曲面構造の集積挙動を活かし、平面分子と組み合わせることで固体中における集積挙動の制御を目指した。アザバッキーボウルと平面アクセプター分子であるPBIを共有結合で連結した分子の合成に成功した。得られた分子は溶液中において、温度または濃度に依存して吸収スペクトルおよびNMRスペクトルが変化することを見出し、集積することが示唆された。さらにX線構造解析の結果より、想定通りの積層をしていることを明らかにした。また、置換位置の異なる誘導体の合成も行い、置換位置によって、積層挙動が変化することも明らかにした。 ねじれたポルフィリン多量体では、さらに置換基を導入することで、これまでの無置換のものよりねじれ角の大きい多量体の合成に成功した。生成物の構造はX線結晶構造解析によって明らかにし、置換基の立体効果に依存して分子がねじれ、または階段型の構造を示すことを明らかにした。さらに、溶液中では溶媒の極性に依存して吸収スペクトルが変化することを明らかにした。このことについて、理論計算を行ったところ、多量体の構造が溶媒の極性および温度によって変化することで、吸収が変化することを明らかにした。 これらの結果は曲面の構造が引き起こす、特殊な集積や動的挙動を用いることによって外部刺激に応答して光吸収が変化する機能や、導電性に優れた材料に繋がる機能を創出できたことを意味し、新たな材料開発に繋がる重要な結果である。
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