研究課題
1.光によって可逆に構造変化可能なナノポーラス錯体の合成:クマリンと類似構造部位を有するチミンは可逆的な[2+2]光環化付加反応を示す分子として知られている。すなわち長波長の光照射によって2量化し、短波長の光で単量化するする。そこで、まず、チミン誘導体に4-ピリジル基を複数導入した新規配位子の合成を行った。続いてチミン部位を含有した新規配位子の光反応実験を行い反応性を確認したのち、ナノポーラス錯体の合成原料とした。また、スチリル基を有する、配位子も合成し、原料とした。原料となる金属イオンは光透過性を考慮し、無色の結晶を与えるd10遷移金属イオン(Zn2+やAg+等)を用いた。さまざまな有機溶剤中で合成検討を行い、動的特性を与える相互篏合構造を基本骨格に有するナノポーラス金属錯体の合成に成功した。2.ナノポーラス錯体の光反応検討:得られたナノポーラス金属錯体に光照射を行った。その結果、ナノ空間に包摂された溶媒分子によって反応性が変化する事が分かった。具体的には、1)大きなゲスト分子を包摂した錯体では反応が起こらず、2)ゲスト分子を包摂していない錯体では通常の[2+2]光環化付加反応を示し、3)中程度の大きさの溶媒分子では通常のオレフィン部位ではない部位で反応する、異常な反応を示す事を明らかにした。3.光照射下での吸着測定:光照射下での吸着測定を可能とする装置によって、光照射を行いながら吸着量を評価するシステムを確立した。また、吸着熱を直接観測可能なシステムの構築も行った。来年度以降、これらの装置を用いて合成したナノポーラス錯体の評価を行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
通常の[2+2]光環化付加反応ではない、異常な反応を見つける事ができた上に、光反応をゲスト分子でコントロールできる事を完全にあきらかにすることができたため。
当初より進んでいる部分に関しては、30年度の研究を前倒しで29年度に実施することも視野に入れ、研究を推進していく。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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