1.昨年度に引き続き、光照射によって[2+2]環化付加反応を示す新規ナノポーラス錯体を合成し、光によって空間構造制御の適用範囲の詳細を検討した。固体中での光環化付加反応は二重結合間距離に依存するとされ、その距離は従来4.2Å以下であることが必要とされてきたが、ナノ空間に柔軟性を付与することで5Å以上離れていても反応することを見出し、その反応性が温度大きく依存することも詳細に明らかにした。 2.ジアゾ基を有するフルオレン誘導を骨格内に有する新規ナノポーラス金属錯体の合成を行った。ジアゾ基を有するナノポーラス金属錯体に対し、光照射を行うことによってナノ空間内に発生させた活性種を電子スピン共鳴法によって精密に測定した。その結果、三重項カルベン種とジラジカル種がともに発生していることを明らかにした。また、ジラジカル種を有するMOFは酸素雰囲気においてもこのジラジカル種は失活しないため、安定なラジカル化合物として利用できることを示した。 3.吸着熱と吸着量を同時に観測可能なシステムによって、様々な構造柔軟性を示す、ナノポーラス錯体のガス吸着過程における熱量測定を実施し、吸着による発熱が構造変化による吸熱で相殺可能であることを示してきた。この現象の詳細を明らかにするために、さまざまな圧力点における、吸着熱を解析したところ、ゲート吸着の過程で吸着熱が半分以下まで減少している事がわかり、ゲート吸着を示す材料が省エネデバイスとして利用可能である事を明らかにした。
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