研究課題/領域番号 |
16H06033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 隆文 京都大学, 工学研究科, 助教 (80650639)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒドリド / 酸水素化物 / バナジウム / 高圧 / ペロブスカイト |
研究実績の概要 |
本研究ではこのヒドリドの特異な圧縮挙動を利用することで、これまで不可能であったアニオンの秩序/無秩序構造の自在な制御、ヒドリドの特異な結合様式を利用した革新的物性制御を試みている。H28年度は、以下の成果が得られた。(1)ヒドリドと酸化物イオンが秩序化しているSrVO2Hに対して60GPa以上の圧力まで高圧のXRD測定を行い、異方的な圧縮を示すことを明らかにした。SrVO2Hの構造からこの異方的な圧縮がヒドリドの非常に高い圧縮率を意味していることを突き止めた。この高い圧縮率はヒドリドが他のアニオンと異なり、内殻電子を持たないこと性質を反映している。(2)高圧下でのSrVO2Hの電気抵抗測定を行ったところ、約50GPaで絶縁体金属転移を起こすことが分かった。バナジウム系における金属絶縁体転移は昔からバナジウム酸化物でよく研究されており、その起源に関して興味が持たれる。 (3)SrVO2Hの高圧下でのDFT計算を行ったところ、実験と同様に50GPa近くで金属絶縁体転移を起こすことが分かった。さらに高圧下でヒドリドを介したV-H-Vの相互作用は非常に小さいことが判明した。この研究によってヒドリドがπ軌道の相互作用をブロックするπ-blockerとして働くことが分かった。(1)-(3)の結果からヒドリドを秩序化させることは、低次元化合物を作る新しいアプローチとなりうることが判明した。これらの結果は論文をまとめ、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記載したように、高圧下での格子の圧力依存性、絶縁体―金属転移、理論計算など順調に実験結果が出ている。さらに申請当初はヒドリドを圧縮することで、ヒドリドを飛び越えた相互作用が発達することを予想していたが、予想外にも超高圧下でもヒドリドがπ-blockerとして働くことが見出された。このことは今後の物質設計にもつながる重要な発見であると考えられる。このような状況から、研究は非常によく進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
超高圧下においてもヒドリドがπ-blockerとして働くことは大変驚くべき結果であり、このようなヒドリドの性質を利用した新しいタイプの低次元化合物における物性開拓が期待される。今後類似の層状バナジウム酸水素化物においてもSrVO2Hと同様な実験を行い、さらにヒドリドを利用した物性を開拓していく。また7GPaを超える高圧合成実験を行い、ヒドリドの圧縮率を利用したヒドリドと酸化物イオンの秩序無秩序相転移を探索する。
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