研究実績の概要 |
本研究ではこのヒドリドの特異な圧縮挙動を利用することで、これまで不可能であったアニオンの秩序/無秩序構造の自在な制御、ヒドリドの特異な結合様式を利用した革新的物性制御を試みている。H29年度 には、バナジウム酸水素化物SrVO2Hの高圧下での挙動を調べることにより、ヒドリドの新しい二つの性質を明らかにし論文を出版した(Nat.Commun.2017)。一つはヒドリドが極めて圧縮されやすいという性質、もう一つは金属原子間の相互作用を対称性の違いでブロックするという性質である。これらの結果により、H-を利用することによって、体積をロスすることなく、原子レベルで次元性を制御できることを示した。H31/R1年度には、この成果をもとに、物質系をを層状ペロブスカイト酸水素化物Srn+1VnO2n+1Hn (n = 1,2)に拡張し、ヒドリドの示す性質をより一般化した(Inorg.Chem.2019)。(1)層状ペロブスカイト化合物Sr2VO3H,Sr3V2O5H2に対して高圧のXRD測定を行い、H29年度に出版した論文(Nat.Commun.2017)で得た結果と同様ヒドリドの非常に高い圧縮率を証明した。このことはヒドリドの秩序無秩序相転移の制御につながる成果であると考えている。(2)高圧下でのSr2VO3H,Sr3V2O5H2の電気抵抗測定を行ったところ、SrVO2Hとは異なり50GPaでも絶縁体金属転移を起こさないことが分かった。これは物質の次元性が低下したことが影響していると考えている。(3)Sr2VO3H,Sr3V2O5H2の高圧下でのDFT計算を行ったところ、(2)の結果を再現した。これらの結果研究によって物質の次元性の物性に対する影響を明らかにした。
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