研究課題/領域番号 |
16H06038
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小池 隆司 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30451991)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機化学 / 光触媒 / 有機フッ素化学 / 可視光反応 / ラジカル反応 |
研究実績の概要 |
有機フッ素化合物は医農薬や機能性材料を設計する際に重要な化合物である。本申請者はこれまでにフォトレドックス触媒作用として一般に認知されるようになってきた可視光を駆動力とする一電子移動反応が、トリフルオロメチル化反応の強力な合成ツールとなることを明らかにしてきた。本研究ではフォトレドックス触媒作用を基盤とした前例のないジフルオロメチル化反応及び、立体選択的なフルオロメチル化反応を開発し、高機能性有機フッ素化合物の創製に挑戦する。 平成28年度は、①新型ジフルオロメチル化試薬の開発及びその反応性調査と②アレンの立体選択的トリフルオロメチル化反応の開発におもに取り組んだ。 ①スルホニウム塩型のジフルオロメチル化剤は、一般に不安定で求電子的なジフルオロメチル化剤やジフルオロメチルラジカル源として十分に研究されてこなかった。本申請者は、分子設計を適切に行うことで安定性と反応性をバランスよく有するジフルオロメチルスルホニウム塩を合成することに成功した。開発したジフルオロメチル化試薬とペリレンを光触媒として用いると効率よくアルケン類のアミノ-ジフルオロメチル化反応が進行することを見出した。 ②アレンに対して、本申請者らが開発した光触媒的オキシートリフルオロメチル化反応を適用したところ、酸素源として酢酸を用いると立体選択的二官能基化反応が進行し、四置換アルケン骨格を有するCF3基含有アリルアセテートが得られることを見出した。本生成物は、多様な含フッ素有機化合物へと誘導できる原料となることもわかった。 以上の知見は、今後の光触媒の設計や反応設計に指針を与える重要なものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しいジフルオロメチル化剤の開発に成功し、さらにこれまでは貴金属光触媒を用いていた反応が多環芳香族分子であるペリレンを光触媒とすることで進行することが分かった。今後、触媒開発を進めるうえで新しい触媒設計の指針が得られた。またアレンの立体選択的オキシートリフルオロメチル化反応も開発することができ、おおむね研究は順調に進んでいる。一方で、生成物である有機フッ素化合物の機能開拓は現在のところ進んでおらず、今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進んでいる。とくに当初予想していなかった多環芳香族分子のフォトレドックス触媒作用が反応に有効であることを見出した。今後は得られた知見をさらに発展させ、新型有機光触媒の開発にも取り組んでいく。また、貴金属を必要としない触媒系を用いれば、より実用的なフルオロアルキル化反応システムの構築が可能になると期待する。入手容易で安価なフルオロアルキル源を設計および探索し、反応を検討する。
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