研究課題
超分子アロステリックシグナル増幅センシング(Supramolecular Allosteric Signal-amplification Sensing) (SASS)に関して、ポリチオフェン(PT)またはカードラン(Cur)を用いる化学センサーの開発を行ってきた。一年目は特にCurとPTから成る複合錯体センサーの形成機構ならびにその動的制御について明らかにしてきた。これまでに、Curを多糖レセプター、水溶性ポリチオフェン(PyPT)をリポーターとする複合錯体が、水溶液中においてアミノ四糖であるアカルボースを選択的に認識することを報告した。しかしながら、どのような機構でCu-PyPT錯体がアカルボースを認識しているかは明確ではなかった。本年度は、この認識機構の解明のために、Cur-PyPTの錯形成挙動を検討して認識機構を明らかにするとともに、グルカン類であるCurあるいはシゾフィラン(SPG)とPyPTからなる複合錯体の平衡を温度、pH、塩濃度で制御できることも見出した。さらにCurをセンサーとする糖センシング系においては、リポーターとして生体系での利用に適した可視部に強い吸収を持つポルフィリンを修飾した修飾カードラン(H2Por-Cur, AlPor-Cur, ZnPor-Cur)を合成し、これらのキロプティカル特性およびアカルボース(4糖)センシングへと展開した。ZnPor-Curは不均一な凝集体を形成するためか、アカルボース添加時の円二色性(CD)強度の再現性が低かった。一方、H2Por-CurおよびAlPor-Curでは、アカルボース濃度に対してCDカップレットの振幅が直線的に増加し、後者では0-1.8 mMの範囲で定量的センシングが可能で、検出下限は200 uMであった。アカルボースを除く単糖から六糖に対する感度は低く、修飾Curによるアカルボースの選択的高感度認識は末端のバリエナミン骨格の寄与が大きいと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では、PTを用いるペプチドセンシングならびにCurを用いる糖センシングを2年かけて行い、残りの1年でデバイス化するという計画である。現在化学センサー構築のための期間の半分が過ぎて、Cur系に関しては十分な成果を挙げられている。さらには、Cur系から派生したCur-PT複合系において、形成機構ならびにその動的制御について明らかにしており、興味深いことに複合錯体の解離・会合平衡を温度、pH、塩濃度で制御できることも見出している。この事実はさらなるセンサー(分析セレクター)への展開を示唆するものであり、十分な進展として見ている。一方、PT系に関してもデータはでており、あとは論文を作成する段階に来ている。従ってこれらを鑑みると、残りの1年での化学センサーの構築に関しては目途がたってきている。つまり、残りの1年で、全ての化学センサーの構築を行い、出来次第、デバイス化へとシフトしていく予定である。
現在までの進捗状況から今後の研究の推進方策として、残りの1年で化学センサーの構築を全て終わらせる予定である。このためにPT系を重点的に攻めていく。ペプチドセンシングから、できれば、最近構想している腫瘍マーカ―へと展開していきたい。このためには、水溶液中で機能するPTセンサーの構築が必須である。そこで、完全メチル化シクロデキストリンの酸開裂によって得られるメチル化オリゴ糖をビチオフェンモノマーユニットに架橋したPMPTz-mの設計をしており、これに関しては既に合成に成功しており、残すはセンシング能の検討のみである。Cur系においては、よりSASSが発揮できると考えられるリポーターとして、AIE性のテトラフェニルエチレンが妥当と考えており、この修飾Curの光物理化学挙動を解明するとともに、糖センシングへと進めていく。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
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