研究課題/領域番号 |
16H06041
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福原 学 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30505996)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アロステリズム / 超分子分析化学 / ポリチオフェン / カードラン |
研究実績の概要 |
1年目に引き続き、超分子アロステリックシグナル増幅センシング(SASS)に関して、ポリチオフェン(PT)並びにカードラン(Cur)を用いた幾つかのセンサー類を合成し、検討を行ってきた。これらの中でも特にCur系において、リポーターとして生体系での利用に適した可視部に強い吸収を持つポルフィリンを修飾した修飾カードランセンサー類(H2Por-Cur, ZnPor-Cur, AlPor-Cur)を構築し、これらの凝縮系を解明するとともに、オリゴ糖の光学センシングへと展開した。マイカ基板上でAFM測定を行うと、H2Por-Cur, AlPor-Curでは球状会合体、ZnPor-Curでは不均一凝集体が観測され、これら修飾Curはglobule構造であることが示された。これらを踏まえ、10% DMSO水溶液中での糖センシングを検討した。ZnPor-Curは不均一な凝集体を形成するためか、アカルボース添加時のCD強度の再現性が低かった。一方、H2Por-CurおよびAlPor-Curでは、アカルボース濃度に対してCDカップレットの振幅が直線的に増加し、後者では0-1.8 mMの範囲で定量的センシングが可能で、検出下限は200 uMであった。これらの成果はChem.Eur.J.誌に掲載された。さらに、Curにリポーターとして4-ジメチルアミノ安息香酸を修飾したDABz-Curを合成した。得られたDABz-Curをキラルホストとし、60% DMSO水溶液中で直鎖アルカン類の分子認識ならびにテルペン類のキラル認識挙動をCDスペクトルの励起子カップレット強度の変化から定量的に検討した。Hill解析を用いてDABz-Curの各アルカンならびにテルペンのエナンチオマー対に対する結合定数を求め、その分子認識能ならびにキラル認識能を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにほぼCur, PTセンサーのセンシング結果はでている。水中に存在する特定のオリゴペプチドをPT主鎖からの光学出力として検出するために、完全メチル化beta-CDをPT側鎖に直結したCPCm (m = 1,2)を設計した。CPCmのキロプティカル特性をCCl4からH2Oまでの種々の溶媒中で検討したところ、ET値が高くなるにつれ、UVスペクトルでは長波長シフトが、円二色スペクトルではエキシトンカップリングが観測された。次に、10% MeOHを含むpH 7.2の33 mMリン酸緩衝溶液中にCPC2を溶かし、アンジオテンシンI-IVならびにキセノプシン-2、その構成要素である種々のアミノ酸を加えるとPT主鎖の吸光度変化によるセンシングが可能であることが明らかとなり、Hill plotによりHill係数nと錯形成定数Kaを求めた。滴定の結果から、芳香族部位を複数持つオリゴペプチドに対し強い錯形成能を示し、XP-2による滴定実験のHillプロットからHill係数nが2.5と求まった。これらの論文執筆のみである。現在デバイス化へと着実にシフトしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これらのデータを基にカーボンナノチューブ(SWCNT)との複合薄膜センサーへとシフトする予定である。具体的には、これらの高分子センサーは検体の僅かな立体構造の差異を、検体認識サイトと検体の相互作用の際に生じるSWCNTの電流値の変化から読み取るものであり、認識サイトを設計することで、様々な検体の認識に適用可能である。しかしながら、SWCNT/PT複合センサーを、キラルガスセンサーへと適用範囲を拡大した例はなく大きなフロンティアである。このような背景を踏まえて、ガスセンサーのコーティング高分子として高いポテンシャルを示しているPTにキラルな認識部位であるbeta-CDを修飾したセンサー(CPCm)を使用する予定である。グルコースが1,4-結合で環状になっているbeta-CDは、キラルな疎水空孔を持つことが知られており、キラル認識部位として選択性の高いセンシングが望める。 平行して、これまでに作成したセンサー類の光物理過程を調査することが今後この化学を発展させるために必須である。この光物理過程とデバイスセンサー類の電流変化との相関を調べることは必須である。
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