研究課題
グラフェンなどに代表される二次元電子材料はその特異な物性からバルク特性を凌駕する。その特異性は電子素子への応用のみならず、エネルギー変換・蓄電デバイスへの応用が近年増しているが、それらの電気化学特性の分析評価法はバルク体を用いた平均的な特性評価に留まっている。本研究で用いたナノ電気化学イメージングは、通常の電気化学測定法と違い、高空間分解能を持ち電気化学測定が可能なナノ電気化学顕微鏡を用いて、電気化学反応に起因する電流応答を可視化するものである。この技術を用いて、二次元材料電子系、特に層状化合物を1原子厚まで剥離して得られた原子膜に応用した。例えば、グラフェンのエッジにおいてルテニウム錯体などのエディエータを用いた酸化還元反応特性が高く発現することを明らかにした。更に層数、アームチェア・ジグザグなどのエッジ構造、構造欠陥、しわなどを検討した結果、それぞれに反応性に違いを定量的に見出した。これらの反応性の違いは電子状態と酸化還元種の酸化還元電位との相関性に起因することを見出した。この知見を利用し、ナノ電気化学イメージングから得られた電流応答から、二次元材料におけるエッジ構造の違いや積層構造の違いを明確にすることにも成功した。これにより、積層構造が不明瞭であっても、エッジの反応性の有無から構造の特定も可能となった。また、ナノピペットの開口径の最適化や測定環境の整備により、空間分解能:50 nm(xy方向)、0.77 nm(z方向-反応電流応答による制御)、最小測定電流応答:0.2 pA程度、測定環境:グローブボックス内(H2O<0.1 ppm, O2< 0.1 ppm)測定を可能とした。
1: 当初の計画以上に進展している
グラフェンなどの二次元電子系材料の特異な電気化学特性の可視化に成功した。メディエータの酸化還元反応を利用したナノ電気化学イメージング結果から、材料構造による反応性の違いが明らかになった。また、グラフェン二層分のエッジ構造における高い電流応答を観察することにも成功した。それらの結果から、通常のエッジ構造のみならず、しわや層数が反応性に及ぼす影響も電流応答性として定量的に捉えた。
二次元電子系材料の電極触媒反応のナノ電気イメージングを行うために、測定雰囲気の制御や他の材料の評価につなげる予定である。特にグラフェンの水素発生反応や酸素還元反応などの電極触媒能に関しては、燃料電池用の次世代電極としても期待されており、これらの反応系の検証を行う。また、他の原子膜にも応用し、二次元電子系材料の高い電極触媒能に関する律速要因の解明に努める。
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