本研究では、DNAコンピューティングの自律的演算機構を利用し、次世代腫瘍マーカーであるmicroRNA(miRNA)を膜タンパク質ナノポアにより特異的、リアルタイムで検出するシステムを構築する。miRNAは腫瘍以外にも様々な器官から分泌され、特定のマーカーだけ検出するには多段階の処理が必要であった。本提案では特定の配列のDNA・RNAを認識し演算処理を行うDNA演算機構を利用し、これを解決する。またこれまでDNA演算の出力検出は蛍光観察で行われてきたが、これをナノポアを用いることで電気的かつリアルタイムで検出を行う。本システムを用い、小細胞肺癌の腫瘍マーカーの高精度検出、また口腔内科の専門研究者と協力し唾液から口腔癌マーカーmiRNAの診断に展開する。これによりオンチップでの癌簡易早期診断が可能になり、また口腔癌の予後観察など幅広い応用が見込まれる。昨年度は胆管癌患者の実検体からのmiRNAの検出を試みた。診断用DNAの最適化の結果、5つの異なるmiRNAの発現上昇をRT不要、ラベルフリー・迅速に検出できた。この結果を基盤に2019年度から基盤研究に移行した。 また海外から輸入予定であった必須試薬の輸入遅延により一部研究内容を変更した。具体的にはナノポア計測に必要なタンパク質試料の入手が遅延したため、胆管癌以外に適用可能な診断用DNAの設計と最適化を行った。その後入手した試薬を用い、最適化した診断用DNAを用いてmiRNA計測を行い、そのパターン診断の条件を検討した。
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