研究課題/領域番号 |
16H06046
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
福 康二郎 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (10711765)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンポジット熱-光触媒 / 過酸化水素 / 有機酸化反応 / 太陽光エネルギー / 水 / 酸素 |
研究実績の概要 |
本研究では、駆動エネルギー源に無尽蔵な太陽光を使用した水と酸素からの過酸化水素合成と、合成した過酸化水素をin-situで有機酸化反応へ利用できる『コンポジット熱-光触媒』の設計を目的としている。 平成28年度は、過酸化水素を使用した有機酸化反応の高効率化を実現する熱触媒設計について主に検討した。 過酸化水素による有機酸化反応は、酸化触媒の高性能化に関する試みが主であり、過酸化水素の酸化特性を制御する試みは少ない。過酸化水素は、炭酸塩等のアニオンと反応することで、異なる酸化特性を示す様々な過酸化物を生成できるユニークな特性を有している。そこで、同一担体上に酸化触媒とアニオン種を融合した複合触媒の設計について検討した。担体には、様々なアニオンの固定化が可能な層状複水酸化物の焼成物(Calcined LDH)、酸化触媒には過酸化水素を用いた酸化反応に対して優れた触媒特性を示すタングステン酸イオンを選択した。モデル反応として、テトラヒドロチオフェンの酸化反応を検討したところ、アニオンの種類によって酸化反応特性が大きく変化することが明らかとなった。特に、炭酸水素イオンをアニオン種として導入した複合触媒上では、アニオンを導入していない触媒に比べて約4倍の極めて高い酸化特性を示した。過酸化水素とアニオンの反応によって生成した過酸化物が、酸化触媒として導入したタングステン酸イオンの活性化に大きく寄与していることが示唆される。 光触媒反応を利用した過酸化水素合成に関しては、最適なpH領域での光析出法によって調製した金助触媒担持バナジン酸ビスマス光触媒が、疑似太陽光照射下での水と酸素からの過酸化水素合成に対して、高い初期活性を示すことも見出した。 平成29年度は、本熱触媒系を光触媒的な過酸化水素合成システムと融合することで、『コンポジット熱-光触媒』の設計も検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理想的なワンポット有機酸化反応系のための『コンポジット熱-光触媒』の設計において、過酸化水素を酸化剤に使用した有機酸化反応を、これまでに無い視点で極めて高効率に達成することが出来た。太陽光エネルギーを使用して水と酸素から過酸化水素を合成する光触媒系と融合することで、画期的な『コンポジット熱-光触媒』系の構築も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、過酸化水素を酸化剤に使用した有機酸化反応に対して、極めて高い触媒特性を示すアニオン含有複合触媒の設計に成功した。今後は、このユニークな触媒特性を『コンポジット熱-光触媒』系の設計に応用するため、光触媒的な過酸化水素合成反応の高効率化を目指す。 平成28年度には、高い初期活性で過酸化水素を合成できる光触媒の設計についても成功している。しかしながら、光触媒上では生成した過酸化水素の酸化分解反応も同時に併発しており、結果として、『コンポジット熱-光触媒』の設計へ効果的に応用できるような過酸化水素蓄積を達成することは出来なかった。より効果的な過酸化水素合成を実現できる光触媒設計を検討することにより、『コンポジット熱-光触媒』の実現を目指す。
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