本研究では、光触媒的な過酸化水素製造と、生成した過酸化水素を利用した有機酸化反応の両方が達成できる熱-光触媒の設計指針を得ることを目的としている。今年度は、「高効率な過酸化水素製造のための光触媒設計とメカニズム解明」および「熱-光触媒による有機酸化反応」について検討した。 (1) 高効率な過酸化水素製造のための光触媒設計とメカニズム解明 光触媒としてWO3やBiVO4、助触媒として高酸化状態のPd種を利用することで、水や酸素からの光触媒的または光電気化学的な過酸化水素製造が可能になることを見出している。更なる高性能化を目指した最適な複合化方法・条件の探索とメカニズム解明について検討した。リン酸塩を含む水溶液(pH=7)中での光析出法によりPd種を複合化することで、リン酸塩のない従来の光析出法で複合化した場合に比べて約2倍もの過酸化水素蓄積量の向上が達成された。リン酸イオンが部分的にコートされた高酸化状態のPd種が、微粒子かつ高分散に複合化されていることも明らかとなった。このようなPd種は、「酸素からの効率的な過酸化水素生成」と「生成した過酸化水素の分解抑制」の両方が実現可能であることが確認された。 (2) 熱-光触媒による有機酸化反応 WO3やBiVO4が過酸化水素存在下でのオレフィン酸化反応のための効果的な熱-光触媒として機能することを見出している。Pd種を複合化したWO3またはBiVO4光触媒を利用することにより、可視光照射下および酸素存在下において、モデル基質であるスチレンの効果的な酸化反応が可能になることを明らかにした。また、各種LDH触媒(FeAl型LDH、タングステン酸イオンを複合化したMgAl型LDH 等)や、細孔制御したBiVO4@meso-SiO2触媒を利用することで、過酸化水素存在下での効果的なスルフィド酸化、ベンゼン酸化、フェノール酸化も達成している。
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