研究課題
本研究では、事前に構造制御された機能性高分子を前駆体とし、その固相炭素化により、高度に形態制御された炭素材料を開発する。具体的にはまず、高次キラル液晶を利用して合成したらせん状共役ポリマーを熱処理することにより、前駆体の形態をそのまま保持したキラル炭素材料を調製する手法を確立する、次に、得られた炭素材料の形態機能の発現を目指す。平成28年度においては以下の研究項目を実施した。1. ポリエチレンジオキシチオフェン (PEDOT) フィルムを炭素化基板として利用することにより、らせん状グラファイトの新たな調製法を開発した。キラル液晶場で合成したヘリカルPEDOTを前駆体としてヘリカルグラファイトを調製する場合、ポリマーフィルムとその支持基板の熱収縮率が大きく異なるため、熱処理後にらせん状形態を保持することは難しかった。一方、ヘリカルPEDOTフィルムと同じ熱収縮率をもつPEDOTフィルムを炭素化基板として用いることにより、炭素化時に引き起こされる熱収縮に伴う歪みが大幅に緩和され、これまでよりも大面積でかつ巻きの向きを容易に判別できるらせん状グラファイトの調製が可能となった。2. ジブロモEDOT結晶の固相重合により単結晶ライクのPEDOTファイバーを合成し、炭素化および黒鉛化することで、高結晶性・高導電性グラファイトファイバーを調製した。さらに、得られた新規炭素材料のスーパーキャパシタ電極への応用を目的として、サイクリックボルタンメトリーおよび定電流充放電法による評価を実施した結果、良好なキャパシタンス値を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
目標とするキラル炭素材料の創製に向けて、現在の所最も有望な前駆体共役ポリマーの1つであるPEDOTを軸として、平成28年度は主に「研究実績の概要」に記載した2つの研究テーマに取り組み、「炭素化基板を用いたらせん状カーボンおよびグラファイトフィルムの新規作製法」についてのテーマは米国化学会の材料化学雑誌である「Chemistry of Materials」 (2016) に、「固相重合により合成したPEDOT単結晶から調製した配向カーボンおよびグラファイトファイバーとそのスーパーキャパシタ電極への応用」についてのテーマは英国王立化学会の物質化学雑誌である「Journal of Materials Chemistry C」 (2017) にそれぞれ公表した。
今後の研究の推進方策としては、平成28年度に引き続き高次キラル液晶重合場の構築および形態制御らせん状共役ポリマーの合成を実施するとともに、キラル炭素材料の開発とその機能発現の達成のため、平成29年度は主に、固相炭素化によるキラル炭素材料の調製手法の確立および構造解析についての研究を実施する。次に、調製したキラル炭素材料の予備的な機能物性の評価を行う。また、抵抗率計を平成29年度の経費で購入し、上記の物性評価に活用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Journal of Materials Chemistry C
巻: 5 ページ: 3823-3829
10.1039/C7TC00709D
Synthetic Metals
巻: 216 ページ: 103-112
10.1016/j.synthmet.2015.09.010
Macromolecules
巻: 49 ページ: 7703-7708
10.1021/acs.macromol.6b01952
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 37783 (1-8)
10.1038/srep37783
Chemistry of Materials
巻: 28 ページ: 8781-8791
10.1021/acs.chemmater.6b04355
http://www.fps.polym.kyoto-u.ac.jp/research.html#papers
http://www.fps.polym.kyoto-u.ac.jp/akagi_hp-english/research.html#papers